一時期、日本中を席巻した高級食パンブーム。
その火付け役として、連日行列が絶えなかった「乃が美」を覚えている方も多いのではないでしょうか。
しかし最近では、「閉店ラッシュが止まらない」といった少し寂しいニュースを耳にすることが増えており、あれほど人気だった乃が美に何が起きているのでしょうか。
本記事では、乃が美の閉店が相次ぐ深刻な理由や、他のパンとの比較、そして今後の動向について、一次情報や専門的な視点を交えながら詳しく調査・紹介していきます。
乃が美の閉店なぜ?閉店ラッシュ理由がやばい?

一世を風靡した乃が美ですが、近年は閉店のニュースが後を絶ちません。
最盛期には全国に約240店舗以上を展開していましたが、2024年の時点ではその半分以下の116店舗にまで減少してしまいました。
ここでは、閉店ラッシュの主な3つの理由を、深く掘り下げていきます。
閉店理由1:原料や人件費、光熱費の高騰のため

まず大きな理由として挙げられるのが、パン屋業界全体を襲っているコストの高騰で、乃が美に限った話ではなく、多くの町のパン屋さんが経営の危機に直面している問題なのです。
パン作りに欠かせない小麦粉の価格は、ロシア・ウクライナ情勢などの影響で世界的に高騰しました。
また、豊かな風味を生み出すバターや生クリームといった乳製品も、飼料価格の上昇などを受けて値上がりしています。
乃が美の食パンは、カナダ産の最高級小麦粉を100%使用するなど、素材に徹底的にこだわっているのが特徴で、こうした原材料費の上昇は、パンの原価を直撃し、経営を圧迫する大きな要因になったと考えられます。

さらに、パンを焼くためのオーブンが消費する電気やガスなどの光熱費、そしてスタッフを雇うための人件費も年々上昇。
北海道にあった「乃が美はなれ室蘭販売店」は、輸送費や原材料費の高騰を理由に2023年に閉店しており、コスト増が直接的な閉店理由となった店舗も存在します。
高級食パンという付加価値の高い商品を扱っていても、このコスト上昇の波に耐えきれず、閉店という苦渋の決断をせざるを得ない店舗が増えているのが現状なのです。
| 補足情報 | 詳細 | 乃が美への影響 |
|---|---|---|
| 原材料費の高騰 | 小麦価格は世界情勢の影響で高騰しました。バターや生クリームなどの乳製品も値上がりしています。 | 最高級小麦粉など高品質な材料を使うため、原価への影響は特に大きいと考えられます。 |
| 光熱費の上昇 | 電気代やガス代が世界的なエネルギー価格の上昇で高くなっています。 | パンを焼くためのオーブンは大量の電力を消費するため、光熱費は経営の大きな負担になります。 |
| 人件費の上昇 | 最低賃金の上昇や人手不足により、スタッフの給与も上がっています。 | 多くの店舗でスタッフを雇用しているため、人件費の増加は経営に直接響いてくるのです。 |
閉店理由2:高級食パンブームの終焉と市場の飽和のため

次に考えられるのは、高級食パンブームそのものが終わりを迎え、市場が飽和してしまったためで、高級食パンブームは、2013年にセブン-イレブンが発売した「金の食パン」がきっかけでした。
普通の食パンの2倍近い価格にもかかわらず大ヒットし、「少し高くても美味しいパンを食べたい」という消費者のニーズを掘り起こしたのです。
乃が美はまさにこの流れに乗り、2013年に大阪で創業すると、瞬く間に行列のできる人気店へと成長しましたが、ブームが過熱するにつれて、「銀座に志かわ」や「嵜本(さきもと)」といったライバル店が次々と登場し、さらにはユニークな店名の個人店も乱立。

市場はあっという間に過当競争、つまりお店が多すぎる状態になってしまいました。
消費者の側も、最初は「特別なご褒美」として楽しんでいたものの、次第に「一度食べたら満足かな」「毎日食べるには少し甘すぎるし、値段も高い」と感じる人が増えていったのです。
コロナ禍では「巣ごもり需要」でおうち時間を楽しむために購入する人が増え、一時的に売上が持ち直した側面もありましたが、それも長くは続かず、ブームが去り、目新しさが薄れた市場で、あまりにも多くの店がお客様を奪い合う状況になった結果、体力の続かないお店から閉店していくという、自然淘汰が起こったのだと思われます。
| 時期 | 市場の動向 | 消費者の心理 |
|---|---|---|
| 2013年~2018年 | 乃が美の創業(2013年)を皮切りにブームが到来しました。メディアで頻繁に取り上げられ、行列ができる人気店が続出しました。 | 「プチ贅沢」や「気の利いた手土産」として、特別感のある体験を求めて購入する人が多かったです。 |
| 2019年~2021年 | 競合店が乱立し、市場は飽和状態になりました。乃が美は2020年に全国47都道府県への出店を達成し、人気はピークを迎えました。 | 目新しさが薄れ、「一度食べれば十分」と感じる人が増え始めた時期だと思われます。 |
| 2022年~現在 | ブームが完全に沈静化し、各地で閉店ラッシュが始まりました。乃が美も店舗数が半減するなど、厳しい状況が続いています。 | 日常食としては価格が高いと感じたり、健康志向から甘さの強いパンを敬遠する人も出てきました。 |
閉店理由3:フランチャイズ(FC)モデルの構造的問題のため

そして、乃が美の閉店ラッシュを語る上で避けて通れないのが、フランチャイズ(FC)というビジネスモデルが抱えていた深刻な問題のためです。
乃が美の店舗のほとんどは、「はなれ」という名前がついたFC店で、乃が美本部が直接運営する直営店は2024年時点でも全体の1割にも満たない、わずか18店舗で、FC店のオーナーたちは、乃が美のブランド名やパンの製法を使わせてもらう代わりに、本部に対して「売上の10%」という、飲食業界ではかなり高額なロイヤリティ(権利使用料)を支払う契約を結んでいたのです。
ブームの最盛期で売上が好調なうちは、この仕組みはうまく機能していましたが、ブームが去って売上が落ち込むと、この10%のロイヤリティが重くのしかかってきます。

驚くべきことに、FC店の9割が赤字経営に陥っているという報道まで出ました。
オーナーたちは何度も本部にロイヤリティの引き下げを交渉しましたが、本部はこれを拒否し続けたのです。
その結果、ロイヤリティを支払うために借金をするオーナーも現れ、「このままでは自己破産するしかない」という悲痛な声が上がる事態にまで発展し、契約を途中でやめようにも莫大な違約金が発生するため、赤字でも店を閉めることすらできないという、まさに八方ふさがりの状況だったのです。
この本部とFCオーナーとの深刻な対立は、ついに裁判沙汰にまで発展し。ブランドイメージを大きく損なうとともに、経営を続けられなくなったFC店の大量閉店に直結してしまったのです。
| 問題点 | 具体的な内容 | FCオーナーへの影響 |
|---|---|---|
| 高額なロイヤリティ | 売上の10%を本部に支払う契約でした。これは飲食業界の中でも高い水準だと言えます。 | 売上が下がっても固定費のように重くのしかかり、赤字経営の大きな原因となりました。 |
| 本部の強硬な姿勢 | 赤字に苦しむFC店からのロイヤリティ引き下げ交渉を、本部は拒否し続けました。 | 経営改善の見通しが立たず、多くのオーナーが絶望的な状況に追い込まれたのです。 |
| 途中解約の困難さ | 契約を途中で解除しようとすると、莫大な違約金が発生する仕組みになっていました。 | 赤字でも店を閉められず、借金を重ねるしかない「地獄のような契約」とも言われました。 |
乃が美が閉店ラッシュ?過去に閉店した店舗例
以下に、過去に閉店した店舗の一部をまとめました。
確かに多くの店舗が閉店していることがわかります。
- 2022年9月29日:乃が美 八王子店 閉店
- 2022年9月30日:乃が美 はなれ 立川店 閉店
- 2022年9月30日:乃が美 高尾駅店 閉店
- 2022年12月31日:乃が美 はなれ 秋田店 閉店
- 2023年2月26日:乃が美 はなれ 山科販売店 閉店
- 2023年5月31日:乃が美 はなれ 岡山店 閉店
- 2023年7月2日:乃が美 加古川販売店 閉店
- 2023年7月2日:乃が美 はなれ 姫路店 閉店
- 2023年8月27日:乃が美 はなれ 久留米店 閉店
- 2023年9月30日:乃が美 はなれ 和白店 閉店
- 2023年12月20日:乃が美 はなれ 宮崎店 閉店
- 2023年12月26日:乃が美 はなれ 新潟店 閉店
- 2023年12月31日:乃が美はなれ山形店 閉店
- 2023年12月31日:乃が美はなれいわき販売店 閉店
- 2023年12月31日:乃が美はなれ 小名浜販売店 閉店
- 2023年12月31日:乃が美 はなれ 鳥取店 閉店
- 2024年3月17日:乃が美(販売店・甲子園口)閉店
- 2024年11月13日:乃が美 はなれ 帯広店 閉店
- 2025年2月28日:乃が美 高級食パンのお店(店舗移転のため一時閉店)
- 2025年6月15日:乃が美 はなれ 松山店 閉店
- 2025年6月15日:乃が美 はなれ 松前販売店 閉店
乃が美は他のパンと比較してどう?皆んなの声を調査

ある口コミサイトに寄せられた70件の評価を分析してみると、星5以上の高評価(★7~★5)を付けた人は合計51人で、全体の約73%を占めていました。
さらに、「またリピートしたい」と答えた人も76%に上っており、パンの味に対する満足度は依然として非常に高いことがわかります。
一方で、全体の約17%にあたる12人が星3以下の評価をしており、手放しで絶賛されているわけではないことも事実で、原材料に「マーガリン」が使われていることへの批判や、価格と味が釣り合わないと感じる意見などが散見されました。
【みんなの声】
個人的には乃が美は好きなパン屋
高級食パンブームが落ち着き、店舗も減ってしまった乃が美ですが、個人的には今でも大好きなパン屋さんの一つです。
確かに、1本(2斤)で864円(税込)という価格は、毎日の食卓に並べるには少し贅沢かもしれません。

スーパーで売られている食パンと比べると3倍から4倍近い値段ですから、レジに持っていく時には少しだけ勇気がいるのも事実です。
あの独特のしっとり、もっちりとした食感と、口の中いっぱいに広がる優しい甘みは、他のパンではなかなか味わうことができない、特別なものだと思いますし、買ってきてすぐの「生」の状態のものを、思い切って手でふわっとちぎって食べる瞬間は、まさに至福のひとときです。
バターもジャムも何もつけなくても、パンそのものの美味しさだけで心から満足できる。これこそ、乃が美がこだわり抜いてきた「生食パン」というコンセプトの真骨頂なのだと思います。

ブームが去った今だからこそ、行列に並ぶこともなく、気軽にあの味を楽しめるようになりました。
たまの「自分へのごほうび」として、あの忘れられない美味しさを味わうために、私はこれからもお店に足を運びたいな、と思っています。
向いている人

乃が美のパンは、その独特の味わいと食感から、特に以下のような方に楽しんでいただけるパンだと思います。
もしあなたがパンに求めるものと合致するなら、きっと乃が美のファンになるはずです。
- パンそのものの甘みや小麦の風味をじっくり楽しみたい人
- トーストせず、焼かずに「生」のまま食べるのが好きな人
- パサパサしたパンより、しっとり、もっちりとした食感のパンが好きな人
- 日常のちょっとした贅沢として、自分へのご褒美を探している人
- 大切な人への気の利いた手土産や、贈り物としてパンを選びたい人
- 食事パンとしてだけでなく、おやつのような感覚で甘めのパンを食べたい人
Q&A
- 乃が美のパンはどうして「生」食パンって言うの?
それは、「焼かずにそのまま生で食べるのが一番美味しい」というコンセプトから名付けられているからです。乃が美のパンは、パン職人の間ではタブーとされてきた「腰折れ」寸前の、ぎりぎりの柔らかさを追求して作られています。そのため、耳まで驚くほど柔らかく、しっとりとした口どけが特徴なのです。トーストせずに食べることで、その繊細な甘みや豊かな風味、独特の食感を最大限に楽しむことができるように計算されて作られています。卵を一切使わず、カナダ産の最高級小麦粉やフレッシュな生クリーム、そして隠し味のはちみつを使うといったこだわりの製法が、この「生」でこそ輝く美味しさを生み出しているのです。
- 乃が美とよく比較される「銀座に志かわ」のパンとは、どう違うの?
どちらも高級食パンブームを牽引した代表格ですが、実はコンセプトや味わいに明確な違いがあります。乃が美は、ほんのりとした優しい甘さが特徴で、公式サイトでもジャムとの組み合わせを提案しているように、何かをつけたりサンドイッチにしたりと、アレンジも楽しめるようなバランスの取れた味わいです。一方、「銀座に志かわ」は仕込み水にアルカリイオン水を使うことにこだわっており、乃が美よりも甘みが強く、生クリームのようなリッチな風味が際立っています。そのため、「何もつけずにパンだけで完成された美味しさ」を追求していると言えるでしょう。食感も、に志かわの方がより繊細でとろけるような柔らかさなのに対し、乃が美はもっちりとした弾力が感じられる、比較的しっかりとした食感です。どちらが良いというよりは、完全に好みの問題と言えそうです。
- FC店の9割が赤字って本当?本部はなぜ助けなかったの?
複数の報道によると、売上の低下と高額なロイヤリティ負担が重なり、FC店の9割が赤字状態に陥ったとされています。本部がロイヤリティの引き下げといった救済措置に応じなかった背景には、いくつかの複雑な要因が絡み合っていると考えられます。一つは、乃が美が2019年に投資ファンド「クレアシオン・キャピタル」に株式の約半数を譲渡し、株式上場(IPO)を目指すようになったことです。上場を目指す過程では、投資家に対して安定した収益性を示す必要があり、短期的な売上や利益を優先するあまり、長期的な視点でのFC店との共存共栄という考えが後回しにされてしまった可能性があります。また、2022年には創業者の阪上雄司氏が社長を辞任するなど、経営陣の内部で対立があり、経営方針が混乱していたことも、FC店との関係悪化に拍車をかけたと見られています。結果として、多くのFCオーナーとの信頼関係は完全に崩壊し、訴訟問題にまで発展してしまったのです。
