大和田エリアで32年間にわたり地域の人々に愛されてきた「味市場(ASIAN FRENCH DINING)」が、道路拡張という街の変化によって閉店することになりました。
突然の発表に多くのファンが驚いています。本記事では、閉店の背景にある都市計画道路の事業内容、なぜ移転での再開が難しいのか、そして跡地の今後について詳しく調査・紹介します。
味市場/大和田の閉店理由は道路拡大?なぜ移転なし?

さいたま市見沼区の大和田エリアで約32年間営業を続けてきた味市場は、「ASIAN FRENCH DINING」を掲げるお店で、フレンチと中華を掛け合わせたような創作料理が楽しめるのが特徴です。
庭園付きの800坪近い一軒家レストランという唯一無二の存在感が、地元の人々の記念日や日常の食卓を支えてきました。閉店の理由、移転がない背景、次の可能性について順を追って見ていきましょう。
閉店までの時系列
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 1990年代初頭 | 味市場、大和田にてオープン(約32年前) |
| 2023年ごろ〜 | さいたま春日部線 大和田工区の用地取得が本格化 |
| 2024年3月時点 | 大和田工区の用地取得率16%(さいたま市公表) |
| 2025年3月時点 | 用地取得率29%に上昇(さいたま市公表) |
| 2025年(推定)7月19日ごろ | 公式Instagramにて閉店を突然告知 |
| 2025年7月20日 | 味市場、閉店 |
閉店の告知はまさに”突然のお知らせ”でした。公式Instagramには「突然のお知らせとなり申し訳ございませんでした」という言葉が並び、32年間の感謝と別れが記されています。
コメント欄には「いつかどこかで復活できるよう検討している」という前向きな言及もあり、完全な幕引きではない可能性を残しています。
SNSには驚きと悲しみの声が相次ぎました。
こうした声は、味市場が単なる”食事の場”を超えて、人々の生活の記憶の一部になっていたことを物語っています。次のようなものが理由として考えられます。
完全に閉店する理由1:店舗と建物が都市計画道路の収用対象区域に入っており、現地での営業を物理的に継続することが不可能であるため

「大和田工区(1019m)」は、境橋付近から第二産業道路までの区間で、さいたま春日部線(旧国道16号)を2車線から4車線に拡幅する事業中の路線です。
これは個人の事情とは関係なく進む都市計画事業であり、交通渋滞の緩和と、災害時の緊急輸送道路としての防災機能強化を目的としています。
都市計画事業の認可を受けた区域内では、「土地の形質の変更」「建築物の建築」「その他工作物の建設」などの行為に制限がかかり、原則として許可が必要となります。 つまり、店を残したくても、建物や土地が法的に使えなくなる段階を迎えるのです。
2025年3月時点の大和田工区の用地取得率は29%で、2024年3月の16%から着実に前進しています。 味市場の閉店はまさにこの取得交渉の結果のひとつと考えられます。

個人的には、32年間根付いた土地が都市の都合で消えていくのは、どれだけ納得できる補償があってもやるせない気持ちになります。
| 道路事業の概要 | 内容 |
|---|---|
| 路線名 | 都市計画道路 さいたま春日部線(大宮岩槻線) |
| 区間(大和田工区) | 境橋付近〜第二産業道路(約1019m) |
| 整備内容 | 2車線→4車線拡幅+無電柱化 |
| 事業主体 | さいたま市 |
| 用地取得率(2025年3月) | 29%(前年比13ポイント増) |
さいたま春日部線は、かつて国道16号として指定されていた歴史ある道路で、現在でも1日あたり上下合計で約2万台の交通量があるにもかかわらず、2車線のまま放置されてきた”渋滞の名所”でした。
この現実を考えれば、道路拡張そのものは地域全体にとっては必要な整備ではあります。ただ、そのしわ寄せが32年続いた人気店に及んでいることは、まちづくりの難しさを改めて感じさせます。
一般的には道路拡張に伴う立ち退きは移転費が出る

道路拡張による立ち退きと聞くと、「補償金で引越しして新しい場所でまた開けばいいのでは?」と思う方も多いはずです。確かに制度の上では、様々な費用がカバーされます。
道路拡張のような公共用地を収用するための立ち退き要請では、店舗の移転費用について、妥当な範囲内で補償を受けることができます。これは所有物件からの移転であろうと賃貸物件からの移転であろうと変わりません。
飲食店や美容院、小売店などは設備の再現に大きな費用がかかるため、補償額が高額になりやすい傾向があります。また、移転後に客足が戻るまでの期間も考慮されるため、一般住宅より複雑な算定となります。
| 補償の種類 | 対象内容 |
|---|---|
| 建物移転補償 | 建物の移築・再築にかかる費用 |
| 動産移転補償 | 厨房機器・家具等の引越し費用 |
| 営業補償 | 移転中の休業期間の収益・固定費・人件費 |
| 賃料差額補償 | 新旧物件の家賃差額 |
| 移転雑費 | 移転先選定・法令手続・転居通知等の費用 |
ただしここで注意が必要です。補償金が出るからといって「移転して再開できる」かどうかは、また別の話。次の理由2でその実態に触れます。
完全に閉店する理由2:800坪の庭園・古民家を含む唯一無二の業態特性から、同等条件の代替物件確保が事実上不可能であるため

味市場の最大の強みは、料理の質だけにとどまりません。「新緑に囲まれた800坪の一軒家」として、庭園、個室、テラス席、さらに”はなれ”まで完備した非日常のリゾート空間こそが、32年にわたって地域の記念日や特別な食事に選ばれ続けた最大の理由です。
敷地内には築90年以上の古民家を改築した「はなれ 山の家」があり、完全予約制・1日2組限定という贅沢な空間として知られていました。
こうした業態を新しい場所で再現しようとした場合、以下のような現実的な壁に直面します。
まず大宮・見沼区周辺で800坪規模の庭付き一軒家物件を借りること自体、まず物件が市場に出ません。仮に見つかったとしても、庭の整備・古民家の改築・個室設備の造作・厨房設備の移設などで、億単位のコストがかかることもあります。

移転に伴って事業がこれまで通り継続できなくなってしまうため、ただ移転に伴う実費を出してもらうだけでは損失の方が大きくなってしまうという現実があります。
補償金を受け取ったとしても、それが「32年かけて育てた空間の価値」と見合うかどうかは別問題です。
| 味市場の業態特性 | 代替の難しさ |
|---|---|
| 敷地約800坪の庭園付き | 大宮周辺でこの規模の賃貸物件はほぼ存在しない |
| 築90年超の古民家「はなれ」 | 新築では同等の雰囲気の再現が不可能 |
| テラス・個室・庭が一体の体験 | 分けて移転すると”味市場らしさ”が消える |
| 32年間で積み上げた常連客と立地 | 移転により客足が大幅に減少するリスクが高い |
移転費が出たとしても、「味市場である理由」そのものが失われてしまうなら、閉店を選ぶのは経営判断として十分に理解できます。コメント欄での「いつかどこかで復活できるよう検討している」という言葉の重さが、ここに来てよりリアルに響きます。
跡地はどうなるの?完全に道路?

大和田工区の用地取得率が2025年3月時点で29%あることを踏まえると、当面は道路用地として整備が進む可能性が高いと考えられます。
800坪の庭と建物が解体されてそのまま道路の一部になる、というのが現時点で最も可能性の高いシナリオです。
SNSのコメントを見ると、地元の人々の”跡地への希望”は温かいものがほとんどでした。
跡地が道路になってしまったとしても、「味市場の精神」を受け継ぐ形で別の場所での復活を望む声が圧倒的です。
実際、公式Instagramには「いつかどこかで復活できるよう検討している」という言及があり、完全な引退宣言ではないことはせめてもの希望です。
豆知識として、都市計画道路の沿道では、道路整備後に新しい店舗や施設が集まるケースも珍しくありません。
大宮岩槻線が完成すれば、大和田エリア自体の交通アクセスは改善するため、新たな飲食店が入りやすい環境になる可能性も考えられます。
味市場/大和田の閉店を驚く声は多い

今回の閉店発表について、Instagramのコメントを分析すると、「復活・再開を願う声」「驚き・悲しみの声」が全体の約90%を占めており、「仕方ない」「当然」といったネガティブでもない現実的な声が残りの約10%という印象です。
特に多かったのは、「子どものころから通っていた」「引っ越してからも来ていた」といった長年のリピーターの声でした。32年という営業年数は、ひとつの世代が子ども時代から社会人・親になるまで付き合い続けられる長さです。
代表的なコメントをいくつか紹介します。
これほどの強い愛着を持たれる飲食店が、道路整備という公共の都合で消えていくのは、まちの記憶が一つ失われるということでもあります。
Q&A
- 味市場はいつ、なぜ閉店するのですか?
味市場は2025年7月20日をもって閉店。理由は、店舗の立地がさいたま市の都市計画道路「さいたま春日部線 大和田工区」の拡幅事業に伴う用地収用対象となったためです。公式Instagramでも「道路拡大という新しい街の変化に伴い、32年間続けてきたこの場所での営業に一区切り」と説明されています。
- 道路拡張で立ち退きになった場合、補償金の交渉はいつまでできますか?
都市計画事業の場合、行政から事業説明会→現地調査→個別交渉という流れで進み、合意できれば立ち退き前に補償金が支払われます。交渉は原則として用地引渡し前まで可能ですが、最終的に合意が成立しない場合は「土地収用法」に基づく強制収用(裁決申請)に移行することもあります。飲食店の場合、移転工事費・内装費・営業補償など複数の項目があるため、弁護士への早期相談が推奨されています。
- 味市場の「はなれ 山の家」は、本店と別に閉店するタイミングが異なりますか?
「はなれ 山の家」は味市場の敷地内にある築90年超の古民家を活用した完全予約制の別業態です。現在のところ本店と同じ敷地内に立地しているため、道路用地収用の影響は本店と同様に受けると考えられます。公式からの個別発表はまだありませんが、本店閉店と同時か、もしくはそれ以前に終了となる可能性が高いと思われます。最新情報は公式Instagramで確認することをおすすめします。
