神奈川県厚木市で長年愛され、世界的なコンテストでも数々の賞を受賞してきた名店「厚木ハム」。
その可愛らしい豚の看板は、国道412号線を通る多くの人にとって、心安らぐ風景の一部でしたが、2026年2月末をもって閉店に。
なぜ、これほどまでに愛されたお店が歴史に幕を閉じることになったのでしょうか。本記事では、その閉店理由の背景や、今後の商品展開、そしてファンからの温かい声などを、一次情報に基づいて詳しく調査し、ご紹介していきます。
厚木ハムの閉店理由は?なぜ撤退?

厚木ハムが2026年2月28日をもって閉店する最大の理由は、公共事業である国道412号バイパス「厚木秦野道路」の建設に伴う、店舗敷地の用地買収です。
お店側も数年前から移転先を探し、事業継続の道を必死に模索していましたが、様々な困難が壁となり、誠に不本意ながら閉店という苦渋の決断に至ったと発表されています。
閉店発表から最終営業日までの時系列
| 日付 | 出来事 | 概要 |
|---|---|---|
| 2025年11月5日 | 顧客への閉店通知 | 顧客向けに、閉店を知らせる手紙が発送されました。 |
| 2026年1月上旬 | 地域メディアでの報道 | 厚木市の地域情報サイト「厚木らぼ」などで閉店のニュースが報じられ、広く知られることになりました。 |
| 2026年1月10日 | 閉店理由の詳細報道 | 用地買収が理由であることが「号外NET」などで詳しく報じられ、ファンに更なる衝撃を与えました。 |
| 2026年1月31日 | オンラインショップ受注終了 | 店舗閉店に先駆け、オンラインでの注文受付がこの日をもって終了となりました。 |
| 2026年2月中 | ありがとうセール開催 | 週末ごとに目玉商品が変わる感謝セールが開催され、連日多くの客で賑わいました。 |
| 2026年2月28日 | 最終営業日 | 21年(または30年とも言われる)の歴史に、多くのファンに惜しまれながら幕を下ろしました。 |
SNSなどでも瞬く間に広がり、「信じられない」「街の誇りがなくなるなんて」といった驚きと悲しみの声が数多く寄せられました。
閉店理由1:公共事業に伴う立ち退き要求と、移転先の確保が困難であったため

厚木ハムの閉店における最も直接的で大きな理由は、公共事業「厚木秦野道路」の建設計画区域に店舗が含まれていたことによる、用地買収のためです。
これは、いわゆる「立ち退き」にあたりますが、単純に場所を明け渡すだけという話ではなかったようです。
お店の公式発表にある「不本意ながら」という言葉の裏には、事業を続けたくても続けられない、いくつもの高いハードルがあったことが伺えます。
具体的には、以下のような問題があったと考えられます。
- 厳しい移転要件
ハムやソーセージを製造するには、食品衛生法に基づく厳格な基準をクリアした施設が必要です。ただの店舗物件ではなく、専門的な厨房設備や衛生管理が可能な構造、そして保健所の許可など、クリアすべき条件が非常に多いのです。 - 駐車場の確保
国道沿いの店舗として、車で訪れるお客様が非常に多かった厚木ハムにとって、十分な広さの駐車場は必須条件でした。しかし、条件に合う移転候補地で、かつ広い駐車場を確保することは、極めて困難だったと思われます。 - 建設のタイムリミット
用地買収には期限が設けられています。その期限内に、土地を探し、新しい店舗を設計し、建設を完了させるというのは、時間的にも資金的にも大きなプレッシャーだったと考えられます。
複数の厳しい条件が重なった結果、移転を断念せざるを得ず、閉店という苦渋の決断に至ったのです。

公共事業による立ち退きで閉店する例は、残念ながら少なくなく、例えば、東京の環状2号線(通称マッカーサー道路)建設の際には、新橋や虎ノ門周辺の多くの老舗飲食店が移転や閉店を余儀なくされました。
地域全体の発展のためにインフラ整備は必要ですが、その陰で長年地元に根付いてきた個人商店が姿を消してしまうのは、非常に寂しい現実だと言えるでしょう。
公共事業と店舗移転の難しさ
| 項目 | 詳細 | 考察 |
|---|---|---|
| 移転の難しさ | 駐車場確保、衛生基準、製造設備など特殊な要件があります。 | 特に厚木ハムさんのような食品加工業は、保健所の許可など、通常の店舗移転よりハードルが高いのです。 |
| 用地買収の補償 | 営業補償や移転費用は出ますが、常連客やブランドイメージの損失は補填されません。 | お店の「魂」とも言える無形の価値は、金銭では測れないものなのですね。 |
| 厚木秦野道路とは | 新東名高速道路と東名高速道路を結ぶ重要な道路です。完成すれば地域の交通が便利になります。 | 地域全体の発展と、個々の店舗の存続が天秤にかけられる、とても難しい問題だと思います。 |
閉店理由2:事業承継のタイミングや経営の将来像を再考する機会となったため

公式に発表されているのは用地買収という外的要因ですが、もう一つの側面として、これを機に事業の将来像を考えるタイミングになった、という内的要因も考えられます。
これは公に語られてはいませんが、長年続く個人経営のお店が大きな決断をする際に、しばしば見られるケースなのです。
厚木ハムは、創業から20年以上、一説には30年近く地域で愛されてきました。一般的に、これくらいの期間経営を続けると、経営者の年齢や後継者の有無といった「事業承継」の問題が現実的な課題として浮上してきます。

厚木ハムのような職人技が光るお店では、その技術や哲学を次の世代に引き継ぐには、長い年月と多大な労力が必要です。
今回の用地買収という、いわば「不可抗力」による大きな変化は、経営者である嶋崎氏にとって、一度立ち止まって今後の経営のあり方をじっくりと考えるきっかけになったのではないでしょうか。
注目すべきは、店舗は閉店するものの、宮城県と福島県にある自社農場「しまざき牧場」でのブランド豚「贅豚(ぜいとん)」の飼育は続けられる、という点で、厚木ハムの味の根幹であり、ブランドの核となる部分は守り続けるという強い意志の表れだと思います。

つまり、これは単なる「廃業」ではなく、店舗運営という形態から、ブランド豚の生産という原点に一度立ち返り、新しい事業の形を模索するための「戦略的転換」の第一歩と捉えることもできるのです。
全国的に後継者不足で廃業する老舗が多い中、厚木ハムはブランドの火を消すことなく、未来への可能性を残す選択をした。そう考えると、今回の閉店は悲しい出来事であると同時に、次なるステージへの希望も感じさせてくれるのです。
事業承継とブランドの未来
| 項目 | 詳細 | 考察 |
|---|---|---|
| 事業承継の難しさ | 高度な製造技術や、経営ノウハウの引継ぎには長い時間がかかります。 | 厚木ハムさんのような世界レベルの職人技は、一朝一夕では真似できないものなのですね。 |
| M&Aという選択肢 | 第三者への事業売却も考えられますが、理念や味を守ることが難しい場合があります。 | 「オールポーク」やドイツ製法へのこだわりが、安易な売却を許さなかったのかもしれません。 |
| 「贅豚」飼育の継続 | ブランドの核となる豚の生産は続けるという点に、未来への希望が感じられます。 | これは単なる閉店ではなく、事業形態の転換に向けた準備期間とも考えられるのです。 |
お試しセット・テイクアウトはできなくなる?今後について

2026年2月28日の店舗閉店に伴い、これまで多くの人に親しまれてきた店頭での商品購入は、残念ながらできなくなりました。
人気の「金メダリストおまかせセット」のようなギフトセットや、焼き豚、メンチカツといったお惣菜のテイクアウトも、店舗がなくなったため利用できません。
また、オンラインショップでの通信販売も、店舗閉店に先駆けて2026年1月31日で受注を終了しています。
つまり、現時点では厚木ハムの商品を直接購入する手段はない、というのが結論になります。
しかし、未来が完全に閉ざされたわけではありません。

代表の嶋崎氏は、閉店に際して「また良いお知らせができるように頑張る」と前向きな言葉を残しています。さらに、前述の通り、ブランドの根幹である自社農場での「贅豚(ぜいとん)」の飼育は継続されます。
これは、将来的に何らかの形で、あの世界が認めた味に再会できる可能性を示唆しているのではないでしょうか。考えられる今後の展開としては、
- イベントへの出店
全国のデパート催事やフードフェスティバルなどで、期間限定で出店する。 - 卸売事業
「贅豚」や、もし製造拠点を確保できれば加工品を、他のレストランや小売店に卸す。 - 新しい形での店舗再開
時間をかけて新たな場所を見つけ、以前とは違う小規模な形や、製造に特化した工房として再スタートする。
などが考えられます。
すぐにとはいかないかもしれませんが、いつかまたあの味に出会える日を、多くのファンが心待ちにしています。
厚木ハムの今後についての展望
| 項目 | 現状(閉店後) | 将来の可能性 |
|---|---|---|
| 商品の購入 | 店舗、オンライン共に購入できなくなりました。 | イベント出店や、他店への卸売販売が考えられます。 |
| 「贅豚」ブランド | しまざき牧場での飼育は継続されます。 | このブランド豚を使った、新しい商品が生まれるかもしれませんね。 |
| 店舗の再開 | 現時点では未定ですが、代表は前向きな発言をしています。 | 新しい場所や形で、いつか復活する日を心から待ちたいです。 |
| イートインコーナー | 2020年12月から休止しており、閉店に伴い終了しました。 | もしお店が復活するなら、またあのドイツプレートが食べたいです。 |
厚木ハムの閉店を悲しむ声は非常に多い

厚木ハムの閉店やその注目度の高さは、数字にも表れています。
グルメサイト「食べログ」では、閉店が報じられた時点で762人もの人が「保存」しており、多くの人が「いつか行きたい」と思っていたことがわかります。
また、地域ニュースサイト「号外NET」の閉店を伝える記事は、短期間で19,000ビュー以上を記録するなど、関心の高さは計り知れません。
SNSや口コミサイトには、閉店を惜しむ声、感謝を伝える声が溢れています。
これらの声からは、厚木ハムが単に美味しい商品を売る店だっただけでなく、地域の風景の一部であり、人々の生活に寄り添い、街の自慢となる存在であったことが痛いほど伝わってきます。
Q&A
- 結局、厚木ハムはなぜ閉店してしまったのですか?
最も直接的な理由は、国道412号バイパス「厚木秦野道路」の建設工事に伴う用地買収です。お店側も事業を続けるために移転先を探していましたが、ハム・ソーセージ製造のための専門的な設備条件や、お客様のための広い駐車場の確保など、多くの課題をクリアすることが難しく、誠に不本意ながら閉店という苦渋の決断に至ったそうです。
- 店舗は厚木市にありましたが、原料の豚を育てている自社農場はどこにあるのですか?その農場もなくなってしまうのでしょうか?
いいえ、農場はなくなりません。厚木ハムの自社農場「しまざき牧場」は、実は店舗のあった神奈川県ではなく、宮城県と福島県にあります。そして、店舗は閉店しましたが、この農場でのブランド豚「贅豚(ぜいとん)」の飼育は、今後も続けられるとのことです。つまり、厚木ハムの美味しさの原点である豚肉は、これからも生産され続けるのです。これは将来への大きな希望だと思います。
- 「厚木」という名前ですが、近くにある米軍の「厚木基地」と何か関係があるのですか?
よくある誤解なのですが、直接的な関係は全くありません。厚木ハムは、厚木市及川という場所に根ざした、地域密着の専門店です。一方、通称「厚木基地」として知られる米海軍厚木航空施設(NAF Atsugi)は、名前に「厚木」と付いていますが、その所在地は厚木市ではなく、お隣の大和市と綾瀬市にまたがっています。歴史的な経緯でその名前が付いているだけで、厚木ハムの「厚木」は、純粋に創業の地である厚木市に由来しています。これは、地元の人でも意外と知らない豆知識かもしれませんね。
