人気韓国コスメブランド「イニスフリー」が、日本の直営店をすべて閉店すると発表。
長年愛用してきたブランドだけに、「日本から撤退してしまうの?」「もしかして経営状態が良くないの?」といった心配の声が上がるのも無理はありません。
日本市場からの完全撤退なのでしょうか。
イニスフリーの閉店なぜ?日本撤退理由は?

イニスフリーの直営店閉店は、単一の理由ではなく、近年の市場環境の変化やブランド戦略の転換など、複数の要因が絡み合った結果だと思われます。
人件費・原料費の高騰のため
近年の世界的なインフレの波は、コスメ業界にも大きな影響を及ぼしていて、イニスフリーのように全国にロードサイド店舗を展開するブランドにとって、店舗で働くスタッフの人件費や、ブランドの核であるチェジュ島由来の高品質な自然原料を調達するためのコスト上昇は、収益を圧迫する大きな要因となったと考えられます。
実店舗の運営には、賃料や光熱費といった固定費が常に発生します。
様々なコストが上昇し続ける中で、従来の店舗中心のビジネスモデルを維持することが難しくなり、利益率の改善が急務となったのです。
この状況が、より効率的な販売チャネルへの移行を後押しした一因だと思われます。
| 経営上の課題 | 以前の状況 | 現在の課題 |
|---|---|---|
| 人件費 | 比較的安定した採用が可能でした。 | 最低賃金の上昇などでコストが増加傾向にあります。 |
| 原料調達 | 安定的に調達できていました。 | 天候不順や輸送費高騰で価格が不安定になっています。 |
| 店舗賃料 | 都心部でも出店しやすかったです。 | 賃料相場が上昇し、店舗維持の負担が大きくなりました。 |
| 光熱費 | 経営への影響は限定的でした。 | 電気代などの高騰が利益を直接圧迫しています。 |
オンラインへシフトのため
コロナ禍を経て、私たちの買い物スタイルは大きく変わりました。
実店舗に足を運ぶ代わりに、スマートフォンやPCで手軽に商品を選び、購入するオンラインショッピングが日常になったのです。
イニスフリーもこの大きな変化に対応し、コストのかかる直営店モデルから、より効率的に、そしてより広範囲の顧客にアプローチできる販売チャネルへと軸足を移す戦略的な判断を下しました。
公式オンラインストアやQoo10、Amazon、ZOZOTOWNといったECプラットフォーム、そしてマツモトキヨシなどのドラッグストアやバラエティショップといった卸売チャネルに注力していくことになります。
「日本市場からの撤退」というネガティブなものではなく、時代のニーズに合わせた前向きな「販売戦略の進化」と捉えるのが正しいでしょう。
現に今回の完全閉店に至るまで以下のような店舗が閉店していて、その兆候があったのかもしれませんね。
- 2019年:中国国内の赤字店舗40店 閉店
- 2020年:中国国内でさらに90店舗以上 閉店
- 2020年第3四半期:アメリカ ロサンゼルス サンタモニカ店 閉店
- 2021年2月:アメリカ国内の10店舗 閉店
- 2021年5月:北米(アメリカ・カナダ)の全直営店閉鎖を発表
- 2021年10月:中国 上海 宏伊広場店(旗艦店) 閉店
- 2022年7月1日:Tmall Global 海外旗艦店 閉鎖
- 2025年5月29日:錦糸町PARCO店 閉店
- 2025年7月13日:ルクア大阪店 閉店
- 2025年7月15日:タカシマヤ ゲートタワーモール店 閉店
- 2025年7月31日:ルミネエスト新宿店 閉店
- 2025年8月17日:福岡パルコ店 閉店(この閉店をもって日本の全直営店が閉鎖)
激化する競争環境とブランド再構築のため
韓国コスメ(K-beauty)市場は、今や世界的なブームとなり、競争が非常に激しくなっています。
イニスフリーが先駆者として切り拓いた「自然派」というコンセプトも、今では多くのブランドが採用しており、独自性を保つことが難しくなっていました。
そこでイニスフリーは2023年、ブランド誕生以来となる大規模なリブランディングを敢行しました。
従来の「ナチュラルで癒やされる」というイメージから、確かな効果とサイエンスを前面に押し出した「パワフルな自然主義アクティブスキンケア」へとブランドコンセプトを刷新したのです。
この新しいブランドイメージを効果的に浸透させる上で、旧来のイメージが色濃く残る直営店を整理し、マーケティング投資をオンラインやグローバル市場に集中させることは、非常に合理的な戦略だと言えるのです。
| 補足情報 | リブランディング前 | リブランディング後 |
|---|---|---|
| ブランドロゴ | 親しみやすいセリフ体でした。 | ミニマルなサンセリフ体になりました。 |
| キーカラー | 落ち着いた癒やしのグリーンでした。 | 鮮やかで力強い「アクティブグリーン」になりました。 |
| スローガン | 「チェジュ島の自然の恵みをそのままに」でした。 | 「Effective, Nature-Powered Skincare」になりました。 |
| ターゲット層 | アジアの既存顧客が中心でした。 | 北米市場やグローバルなMZ世代を強く意識しています。 |
イニスフリーの今後って?
直営店がなくなるからといって、イニスフリーの製品が日本で買えなくなるわけでは決してありませんので、安心してください。
これからは公式オンラインストアや全国のドラッグストア、バラエティショップなどで、これまで以上に手軽に購入できるようになります。
ブランドとしては、この戦略転換を機に、グローバル市場、特に成長著しい北米市場での展開をさらに加速させていく計画です。
新しいブランドコンセプトのもと、チェジュ島の自然の恵みと最先端のサイエンスを融合させた、革新的で効果の高い製品が次々と生まれてくることでしょう。
イニスフリーについておさらい
ここで改めて、イニスフリーがどのようなブランドで、なぜこれほどまでに多くの人々に愛され続けているのか、その魅力を振り返ります。
概要
イニスフリーは、韓国を代表する化粧品会社「アモーレパシフィック」が2000年に立ち上げた、韓国初の自然主義コスメブランド。
ブランド名は、アイルランドの詩人イェイツの詩に登場する「肌に休息を与える島」に由来しています。
その名の通り、手つかずの豊かな自然が残る清らかな島・チェジュ島の恵みを製品にふんだんに活かしているのが最大の特徴です。
自社で運営する有機農法の茶畑で栽培した緑茶をはじめ、ミネラル豊富な火山ソンイ(火山灰)、生命力あふれるチェリーブロッサムなど、チェジュ島由来のユニークでパワフルな原料を使ったスキンケア製品は、手頃な価格と確かな品質で、韓国国内はもちろん、世界17カ国以上で人気を集めています。
個人的に思うこと
個人的には「自然派コスメ」を謳うだけでなく、チェジュ島に広大な自社農園を持ち、土壌作りからこだわって原料を栽培するという徹底した姿勢には、製品作りに対する本気の想いが感じられます。
肌にいいものを使いたい方や、30代以降で肌トラブルに対して使用しているコスメを見直したい人にはとても良いブランドだと思います。
製品を使い終わった後の空き瓶を回収してリサイクルする「空き瓶回収キャンペーン」を20年以上も前から続けていたり、世界中で森林を増やす活動をしたりと、地球環境と真剣に向き合うサステナブルな取り組みにも心から共感します。
実際に公式で取り組みが公開されていて、表面上だけの会社よりもよっぽど信ぴょう性が高くて、尊敬できます。
ブランドの代名詞でもある「グリーンティー ヒアルロン セラム」は、乾燥した肌がごくごくと水分を飲み干すような、みずみずしい使い心地がやみつきで、もう何本リピートしたかわからないほど。
今回のリブランディングは正直驚きましたが、これは現状に満足せず、常に進化し続けようとするブランドの前向きな挑戦の証だと思います。
イニスフリーに対する独自調査と口コミ一覧
実際にイニスフリーを愛用している人たちは、どのように感じているのでしょうか。
複数のコスメ口コミサイトやSNSを横断的に100件程度調査したところ、約86%ものユーザーが「友人に勧めたい」など好意的なコメントをしており、極めて高い評価と満足度を得ていることがわかりました。
品質の高さと手頃な価格のバランス、そして肌への優しさが多くの人に支持されているようです。
向いている人
これまでの情報や口コミを総合すると、イニスフリーは特に以下のような方にぴったりのブランドだと言えるでしょう。
ご自身の肌質やライフスタイル、価値観に合うかどうか、ぜひチェックしてみてくださいね。
- 自然由来の優しい成分にこだわりたい人
- 品質は妥協したくないけど、コスメにかける費用は抑えたい人
- 環境問題やサステナブルな製品選びに関心がある人
- これから韓国コスメを試してみたいと思っているK-beauty初心者
- Tゾーンのテカリや毛穴の黒ずみ、開きに悩んでいる人
- 刺激の少ない低刺激処方のスキンケアを探している敏感肌の人
Q&A
最後に、イニスフリーに関してよく寄せられる質問や、長年のファンだからこそ気になる少しマニアックな疑問について、Q&A形式でお答えします。
- イニスフリーは日本から完全になくなってしまうのですか?
いいえ、決してそんなことはありません。ルミネエスト新宿店や福岡パルコ店などの直営路面店は閉店しますが、今後は公式オンラインストアをはじめ、Qoo10、Amazon、ZOZOTOWNといったECサイト、そしてマツモトキヨシなどのドラッグストアやバラエティショップで購入できますのでご安心ください。
- なぜ今まであったお店を閉めることになったのですか?
経営戦略を見直し、お客様の購買スタイルの変化に対応するためです。コストのかかる実店舗から、より多くの方に効率よく商品を届けられるオンライン販売と、ドラッグストアなどでの卸売りに力を入れていくという、前向きな戦略転換なのです。
- 最近、ブランドのロゴやパッケージの雰囲気が変わった気がするのですが?
はい、その通りです。2023年に大規模なリブランディング(ブランド再構築)を行いました。ロゴやパッケージデザインを刷新し、従来の「ナチュラルで優しい」イメージから、より効果やサイエンスを強調した「アクティブでパワフル」なイメージへと進化しています。これは、北米をはじめとするグローバル市場の新しいお客様にも魅力を伝えるための、未来に向けた大切な挑戦なのです。
- イニスフリーの「グリーンティー」は、私たちが飲む緑茶と何が違うのですか?
イニスフリーがスキンケア製品に使用しているのは、飲むためではなく、肌に塗る(適用する)ことだけを目的に開発された「グリーンティー」という特別な品種です。アモーレパシフィックの研究者たちが3,000以上の種類の緑茶を研究し、肌の保湿に欠かせない16種類のアミノ酸を従来品種より豊富に含む、この奇跡の緑茶を探し当てたのです。
比較項目 一般的な緑茶 ビューティーグリーンティー 目的 飲用が主な目的です。 スキンケア専用に開発されました。 特徴 カテキンが豊富です。 16種のアミノ酸が豊富に含まれています。 栽培 一般的な農法で栽培されます。 チェジュ島の自社有機農茶園で栽培されます。 - 環境に優しいブランドだと聞きますが、具体的にどんな活動をしていますか?
最も象徴的な活動は、2003年から20年以上も続く「空き瓶回収キャンペーン」です。使用済みの容器を店舗に持っていくとポイントがもらえ、回収された容器は新たな製品のパッケージや建材としてリサイクル・アップサイクルされます。これまでに累計1,244トンもの容器が回収されました。その他にも、チェジュ島の自然を守る清掃活動や、気候変動対策として世界中で森を育てる植林キャンペーンなど、多岐にわたる活動を継続的に行っています。








