名古屋駅の顔として長年親しまれてきた名鉄百貨店本店が、2026年2月末での閉店を発表しました。
シンボルのナナちゃん人形はどうなるのか、跡地はどう変わるのか、気になる点はたくさんありますよね。
本記事では、名鉄百貨店がなぜ閉店するのか、その背景にある専門的な理由から、ナナちゃん人形の未来、そして壮大な名古屋駅前再開発プロジェクトの流れまで、詳しく調査し、分かりやすく紹介していきます。
名鉄百貨店の閉店なぜ?ナナちゃん人形も撤去?

多くの人に愛されてきた名鉄百貨店が、なぜ70年以上の歴史に幕を閉じることになったのでしょうか。
その背景には、単なる業績不振だけではない、時代の大きな変化と都市開発のダイナミズムが関係しています。
閉店理由1:名古屋駅周辺における商業環境の激変と競争の激化に対応しきれなくなったため

名鉄百貨店が閉店に至った大きな理由の一つは、名古屋駅周辺の商業地図が大きく塗り替わり、熾烈な競争環境に置かれたことが考えられます。
2000年に隣接して開業したジェイアール名古屋タカシマヤの存在は、駅前の人の流れと消費の動向を劇的に変えました。
ジェイアール名古屋タカシマヤは、JR名古屋駅の真上に位置するという圧倒的な立地の良さと、若い世代をターゲットにした斬新な店づくりで、広域から多くの人々を集めることに成功しました。
その結果、名古屋エリアで最大の百貨店へと成長したのです。実際のところ、2023年度の売上高は、ジェイアール名古屋タカシマヤ(タカシマヤ ゲートタワーモール含む)が1891億円に達したのに対し、名鉄百貨店本店は352億円と、5倍以上の差が開いてしまいました。

もともと日本の百貨店には、三越や高島屋のような呉服店をルーツに持つ「呉服系」と、名鉄や東急のような鉄道会社が沿線の価値向上のためにターミナル駅に作った「電鉄系」という2つの流れがあります。
呉服系が富裕層を主な顧客としてきた歴史があるのに対し、電鉄系は戦後の高度経済成長期に豊かになった幅広い大衆層に支えられて発展してきました。
名鉄百貨店も、まさしく地域に根差した「大衆百貨店」として親しまれてきたのですが、バブル崩壊後の日本では、所得格差が広がり、「一億総中流」と呼ばれた時代は終わりを告げました。

消費者のニーズは多様化し、百貨店業界全体が厳しい時代を迎えます。そうした中で、百貨店が生き残るための一つの道は、富裕層やインバウンド観光客をターゲットに、ラグジュアリーブランドや宝飾品といった高額品販売に特化することでした。
これは、呉服系の百貨店が得意とする分野ですが、幅広い層に「ちょっと良いもの」を提供してきた電鉄系百貨店は、ユニクロのような専門店の台頭や郊外の大型ショッピングセンターの増加により、その立ち位置が難しくなっていったのです。
| 補足情報 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 競合の出現 | 2000年にジェイアール名古屋タカシマヤが開業しました。 | JR名古屋駅直結という強みを活かし、瞬く間にエリアの主役となりました。 |
| 売上高の差 | 2023年度の売上高は、JR名古屋高島屋の5分の1以下でした。 | 競争の激しさを物語る数字だと言えます。 |
| 百貨店の系統 | 名鉄百貨店は鉄道会社が母体の「電鉄系」です。 | 幅広い層に親しまれる一方、富裕層向けの高額品販売では苦戦した可能性があります。 |
| 時代の変化 | 「一億総中流」社会が終わり、消費が二極化しました。 | 百貨店にとって得意としてきた中間層マーケットが縮小してしまったのです。 |
閉店理由2:親会社である名古屋鉄道が進める駅周辺の壮大な再開発計画の中核エリアに含まれたため

もう一つの、そしてより直接的な閉店理由は、親会社である名古屋鉄道(名鉄)が主導する、名古屋駅周辺一帯の再開発計画で、名鉄百貨店本店が入るビルは、この大規模な都市改造プロジェクトの対象エリアにまさに含まれており、取り壊されることが決まったのです。
この再開発は、単に古いビルを建て替えるという話ではありません。
名鉄百貨店本店だけでなく、近鉄パッセが入る名古屋近鉄ビル、ヤマダデンキLABI名古屋が入るビルなど、複数の建物を一体的に開発する、非常に大規模なものです。
計画では、現在の場所に商業施設、オフィス、ホテルなどが入る3棟の高層ビルを建設する案が有力視されています。

工事の完了は2040年代前半を目指しており、リニア中央新幹線の開業も見据えた、未来の名古屋の玄関口を創り出すプロジェクトなのです。
鉄道会社にとって、ターミナル駅周辺の不動産開発は経営の根幹をなす重要な事業で、少子高齢化で鉄道利用者の長期的な減少が見込まれる中、不動産からの安定した収益を確保することは、これまで以上に重要になっています。
かつて百貨店は、駅の集客装置として大きな役割を果たしてきましたが、前述の通り百貨店業界全体の売上が落ち込む中で、売れ行きによって収入が変動する百貨店経営を続けるよりも、テナントから安定した家賃収入が見込めるショッピングセンターやオフィスビルへと業態を転換する方が、鉄道会社にとっては経営的に合理的だと判断されるケースが増えています。
東京の渋谷駅(東急百貨店)や新宿駅(小田急百貨店)でも、駅の再開発に伴って長年親しまれた百貨店が閉店や規模縮小を余儀なくされました。
| 補足情報 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 計画主体 | 親会社の名古屋鉄道が主導する再開発プロジェクトです。 | 近鉄グループなども共同で事業に参加します。 |
| 計画概要 | 複数のビルを一体で建て替え、高層ビルを建設します。 | 商業施設、オフィス、ホテルなどが入る複合施設になる予定です。 |
| 完了時期 | 最終的な完成は2040年代前半の予定です。 | 2033年度には一部が開業する見込みです。 |
| 鉄道会社の戦略 | 鉄道事業以外の安定収益源として、不動産事業を重視しています。 | 百貨店経営よりも、テナント貸しの方が安定収益を見込めるという判断があったと考えられます。 |
ナナちゃん人形も撤去?再開発の流れは?

名鉄百貨店の閉店で、多くの人が最も気にかけているのが、名古屋駅前の待ち合わせスポットとして半世紀以上愛されてきた巨大マネキン「ナナちゃん人形」の行方ではないでしょうか。
結論から言うと、再開発工事が始まれば、ナナちゃん人形は現在の場所に立ち続けることはできなくなります。
名鉄百貨店の広報担当者も「現在の場所にいられなくなる可能性が高い」と説明しており、一時的な撤去は避けられない見通しです。その未来に備えるため、ナナちゃんは2025年10月、52歳にして初めての「健康診断」を受けました
これは、体を7つのパーツに分解し、3Dスキャナーなどを使って強度や劣化状況を詳しく調べるという本格的なもので、今後のナナちゃんの「就職活動」、つまり移設先や新しい役割を探すための準備とも言われています。
ただ、2026年2月の百貨店閉店後、ナナちゃんがどうなるのか、具体的なことはまだ何も決まっていません。
再開発後の新しいビルに戻ってくるのか、あるいは全く別の場所で新たな人生(人形生?)を歩むのか。多くのファンがその去就を心配しながら見守っています。
さて、このナナちゃんの運命も左右する「市街地再開発事業」は、一般的にどのような流れで進むのでしょうか。
今回の名鉄のケースは、地権者が主体となって進める「第一種市街地再開発事業」という方式に近い形で、この方式は、地権者の合意形成を丁寧に行いながら、段階的に進められていきます。
- 準備段階(協議会・準備組合の設立): まず、地権者や地域住民が集まり、「街をこうしたい」という話し合いを始めます。そして、再開発を本格的に検討するための「準備組合」を設立します。
- 計画段階(都市計画決定・組合設立): 準備組合で具体的な計画案を練り、行政による「都市計画決定」を受けます。これにより、再開発エリアや建物の概要が正式に決まります。その後、地権者の3分の2以上の同意を得て「再開発組合」を設立し、事業の正式な実行主体となります。
- 実施段階(権利変換・工事): ここが最も重要なステップです。地権者が元々持っていた土地や建物の権利を、新しくできるビルの床(区分所有権)に置き換える「権利変換計画」を定めます。この計画が認可されると、いよいよ既存の建物の解体工事と新しいビルの建設工事が始まります。
- 完了段階(竣工・入居): 工事が完了し、新しいビルが完成すると、地権者は権利変換計画に基づいて新しいフロアに入居します。ここで再開発組合は解散し、その後は新しいビルの「管理組合」によって運営されていきます。
名鉄の再開発も、こうした法的な手続きを踏まえながら、2040年代の完成に向けて進んでいくことになります。
名鉄百貨店の印象を調査
長年、名古屋の人々に愛されてきた名鉄百貨店。閉店を前に、人々はどのような印象を抱いていたのでしょうか。
インターネット上の口コミなどを調査すると、割合としては、「利便性や接客、品揃えへの好評価」が約50%、「建物の古さや競合店との比較に関する意見」が約30%、「その他(レストラン街やテナントに関する言及など)」が約20%といった印象です。
代表的な口コミをいくつかご紹介します。
これらの声からは、駅直結の利便性や丁寧な接客、地域に根差した品揃えといった「古き良き百貨店」の魅力が高く評価されている一方で、施設の老朽化や競合店の登場による魅力の相対的な低下という、厳しい現実も浮かび上がってきます。
多くの人にとって、単なる買い物場所ではなく、生活に密着した思い出深い場所であったことが伝わってきますね。
Q&A
ここでは、名鉄百貨店の閉店に関してよくある質問や、少し踏み込んだ疑問についてQ&A形式でお答えします。
- 百貨店が閉店したら、建物はすぐ取り壊されるの?外商サービスとかはどうなるの?
名鉄百貨店本店は2026年2月28日に営業を終了し、その後、2026年度中(2027年3月まで)にビルの解体工事が始まる予定です。ただし、百貨店の事業がすべて無くなるわけではありません。売上の約4分の1を占めるという優良顧客向けの外商事業は、閉店後も継続されます。2025年5月には名古屋駅近くの別のビルに、富裕層向けの美術品などを販売する新たな拠点「M’s ROYAL GALLERY」を開業し、顧客との関係を維持していく方針です。つまり、「名鉄百貨店」という店舗はなくなりますが、会社の一部事業は形を変えて存続する、ということになります。
- ナナちゃん人形って、スイス生まれじゃなかったの?
ナナちゃん人形は長年「スイス生まれ」と紹介されてきましたが、近年の調査で、実際は「スイスの会社がデザインし、日本の長野県伊那市(旧高遠町)にあった工場で製造された」ということが判明しました。もともとスイスの会社が持っていた巨大マネキンの型を使い、ライセンス契約を結んだ日本のマネキン会社が製造した、いわば「日本製」だったのです。なぜスイス製ということになっていたのかというと、設置当時は製造元にあまり関心がなく、イメージ戦略としてそのように紹介されていたようです。この事実は、地元メディアで大きく報じられ、多くの人を驚かせました。
- なぜ鉄道会社は、儲かっていたはずの百貨店を閉めてまで再開発をするの?
これは、鉄道会社のビジネスモデルの変化が大きく関係しています。かつて鉄道会社は、沿線の住民を増やすために、ターミナル駅に百貨店やホテルを作り、街の魅力を高めることで鉄道の利用者を増やす、という戦略をとってきました。しかし、現代では状況が大きく変わりました。百貨店業界全体の不振に加え、少子高齢化で鉄道利用者の将来的な減少は避けられません。そこで鉄道会社は、電車の運賃収入に頼るだけでなく、駅前の価値ある土地を最大限に活用し、オフィスや商業テナントからの「家賃収入」という、より安定的で長期的な収益源を確保する方向に舵を切っているのです。今回の再開発は、まさにその象徴的な動きと言えます。百貨店を続けるよりも、最新の複合ビルを建ててテナントを誘致する方が、会社の将来にとってプラスになるという経営判断なのです。これは、名鉄だけでなく、全国の多くの電鉄系企業に共通する流れでもあります。

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