東京都多摩市にある商業施設「クロスガーデン多摩」。2008年の開業以来、多くの地域住民に親しまれてきましたが、近年はテナントの閉店が相次ぎ、「廃墟モール」とまで呼ばれる事態になっています。
核店舗であったスーパー「フーディアム」の閉店は、多くの人々に衝撃を与えました。
なぜ、かつて賑わったショッピングセンターがこのような状況に陥ってしまったのでしょうか。
クロスガーデン多摩のテナントの閉店理由がやばい?跡地どうなる?

クロスガーデン多摩では、2025年頃から閉店の動きが加速し、特に2026年2月の核店舗「フーディアム多摩センター」の閉店は、施設の将来に大きな影を落としました。
SNS上では「18年も営業していたのに残念すぎる」「これからどこで買い物をすれば…」といった、長年利用してきた住民からの悲しみの声や、今後の生活への不安を訴える声が数多く見られます。
まずは、これまでの閉店の流れを時系列で見ていきましょう。
| 時期 | 出来事 | 備考 |
|---|---|---|
| 2008年4月25日 | クロスガーデン多摩 開業 | 当初はヤマダ電機なども出店し、賑わいを見せていた。 |
| ~2024年 | テナントの入れ替わりが激化 | GU、ノジマ、アニメイト、かねたや家具店などが次々と閉店・移転。 |
| 2025年10月10日 | モリバコーヒー 閉店 | 2階にあったカフェ。利用者から惜しむ声が上がった。 |
| 2025年11月16日 | フーディアム多摩センター 閉店発表 | 2026年2月1日での閉店が告知され、地域に衝撃が走った。 |
| 2026年2月1日 | フーディアム多摩センター 閉店 | 開業から約18年間営業した核店舗がなくなった。 |
| 2026年3月 | 3階フロアが「廃墟化」 | 屋内エリアはほぼ全ての区画が空き家となり、一部は通行禁止に。 |
このように、主要なテナントが次々と去ってしまったのが現状です。
では、なぜこのような事態になってしまったのでしょうか。その背景には、単なる経営不振だけでは片付けられない、構造的な問題が隠されているのです。
閉店理由1:駅前の商業エリアから孤立した「絶妙に悪い立地」のため

クロスガーデン多摩が苦戦している一つ目の大きな理由は、その立地にあると考えられます。
多摩センター駅の周辺には、「ココリア多摩センター」や「丘の上プラザ」といった商業施設が集中しており、駅と直結していることもあって、平日・休日を問わず多くの人で賑わっていますが、クロスガーデン多摩は、その賑わいの中心地から徒歩で10分弱離れた場所に位置しているのです。
この「歩いて行けなくはないけれど、少し面倒」という絶妙な距離感が、徒歩で移動するお客さんを遠ざけてしまった要因だと思われます。
駅前の施設で買い物を済ませた人が、わざわざ少し離れたクロスガーデン多摩まで足を運ぶ、という強い動機付けが生まれにくかったのではないでしょうか。
大通りに面していて駐車場も完備されているため、車でのアクセスはしやすいのですが、逆に言えば、車を持たない学生や高齢者層にとっては利用しづらい施設だったとも言えるのです。
| 施設比較 | クロスガーデン多摩 | 駅前の商業施設群 |
|---|---|---|
| 駅からのアクセス | 徒歩約10分と少し離れている | 駅直結または駅前で便利 |
| 施設の状況 | テナントが撤退し、閑散としている | 多くの人で賑わっている |
| 集客のポイント | 主に車での来店を想定している | 電車利用客や徒歩客を自然に集客できる |
このような立地の問題は、多摩ニュータウンが目指した「トランジット・オリエンテッド・デベロップメント(TOD)」、つまり公共交通機関を軸とした街づくりの考え方と、少しズレが生じてしまった結果なのかもしれません。
駅を中心としたコンパクトな街づくりが進む中で、その中心から少しだけ外れてしまったことが、集客力の低下に直結してしまったのです。
閉店理由2:URが土地を所有する「事業用定期借地」という契約形態のため

二つ目の、そしてより根深い理由が、土地の契約形態にあります。
クロスガーデン多摩が建っている土地は、実は運営会社のものではなく、UR都市機構(旧・都市再生機構)が所有していて、運営会社はURから土地を借りて商業施設を運営する「事業用定期借地」という契約を結んでいるのです。
この契約形態は、契約期間が決まっているため、満了が近づくと運営会社は大きなリスクを背負うことになります。
例えば、多額の費用をかけて施設全体をリニューアルしても、その投資費用を回収する前に契約期間が終わり、土地を返さなければならなくなる可能性があるため、契約満了が視野に入ってくると、大規模な改修や新しいテナントを誘致するための投資に消極的になりがちです。
クロスガーデン多摩の外壁が色褪せ、柵が錆びるなど、施設全体の老朽化が目立つのも、こうした投資のしにくさが背景にあると考えられます。
この問題を理解するために、非常に対照的な事例があります。
それは、神奈川県綾瀬市にあった「綾瀬タウンヒルズ」です。この施設も定期借地権の満了によって2025年2月に一度閉店しましたが、驚くべきことに、そのわずか13ヶ月後にはスーパーの「ヤオコー」を核とする新しい商業施設として生まれ変わりました。
この超高速再生が可能だった最大の理由は、閉店後に土地が市からヤオコーへと売却され、「所有権が移転した」からです。土地の所有者となったヤオコーは、自社の長期的な経営戦略に基づいて、迅速に大規模な投資判断を下すことができたのです。
| 土地の権利と再開発の比較 | クロスガーデン多摩 | (旧)綾瀬タウンヒルズの跡地 |
|---|---|---|
| 土地の所有者 | UR都市機構(借地) | 株式会社ヤオコー(所有地) |
| 再開発のスピード | 先行き不透明で、廃墟化が進行 | 閉店からわずか13ヶ月で再生オープン |
| 違いを生んだ要因 | 運営会社が大規模投資をしにくい | 所有者自身が迅速な投資判断を下せる |
クロスガーデン多摩は、土地の所有者がURのままであるため、綾瀬のケースのようなスピーディーな再開発が難しい状況にあります。
この「事業用定期借地」という仕組みが、施設の魅力を維持・向上させるための足かせとなり、結果的にテナント流出と廃墟化を招いてしまった、というのが専門的な視点から見たもう一つの大きな理由なのです。
跡地はどうなるの?

ネット上の掲示板などでは、「また別のスーパーや家電量販店が入って商業施設として復活してほしい」という声が見られますが、これまで見てきたように、立地や土地契約の問題が解決されない限り、新たな大規模テナントを誘致するのは簡単ではないかもしれません。(2026年3月時点)
そこで考えられるのが、商業施設以外の用途への転換です。
例えば、近隣では2025年1月に閉館した「京王プラザホテル多摩」の跡地が、低層階に商業施設、高層階に分譲マンションという複合施設として再開発される計画が発表されていることから、同じく住宅の需要が非常に高いエリアであるクロスガーデン多摩(多摩センター周辺)でもマンションを中心とした複合施設に生まれ変わる可能性は十分に考えられるでしょう。
最も抜本的な解決策は、UR都市機構がこの土地を民間のデベロッパーなどに売却することです。
前述の綾瀬タウンヒルズの事例のように、土地の所有権が新しい事業者に移れば、自由で大胆な発想に基づいた、全く新しい施設への再開発がスピーディーに進む可能性があります。
URは多摩ニュータウン内の他の土地を民間に売却した実績もあるため、このシナリオも決してゼロではないのです。
| 多摩センター周辺の再開発事例 | 以前の施設 | 再開発後の姿(または計画) |
|---|---|---|
| 京王プラザホテル多摩 跡地 | 地域を代表するホテルでした。 | 商業施設と分譲マンションの複合施設になる予定です。 |
| 綾瀬タウンヒルズ | 70店舗が入る総合ショッピングセンターでした。 | スーパー「ヤオコー」を核とした生活密着型の施設に生まれ変わりました。 |
| クロスガーデン多摩 | スーパーや専門店が入る商業施設です。 | 現時点では未定ですが、様々な可能性が考えられます。 |
いずれにせよ、跡地の利用方法が決まるまでには、まだ時間がかかるかもしれません。地域住民の生活に直結する問題だけに、今後の動向が注目されます。
クロスガーデン多摩の相次ぐ閉店を驚く声も…

長年にわたり地域の生活を支えてきた施設だけに、今回の閉店ラッシュ、特にフーディアムの閉店を悲しむ声は後を絶ちません。
地域情報サイトやSNSのコメントを分析すると、閉店を直接的に惜しむ声が約8割、今後の利便性の低下を心配する声が約2割といった印象で、多くの人がこの状況を残念に思っていることが伝わってきます。
これらの声からは、単に一つの商業施設がなくなるというだけでなく、長年慣れ親しんだ生活の一部が失われることへの喪失感や戸惑いが感じられます。
Q&A
最後に、クロスガーデン多摩に関してよくある質問や、少し踏み込んだ疑問についてQ&A形式でお答えします。
- 結局、クロスガーデン多摩は完全に閉館してしまうのでしょうか?
2026年3月の時点では、完全に閉館するという公式発表はありません。しかし、施設の「顔」であったスーパー「フーディアム」が2026年2月に閉店し、3階フロアはほぼ全てのテナントが撤退して「廃墟」のような状態になっています。西松屋やセリア、ゲームセンターなど一部の店舗は営業を続けていますが、施設全体の活気が失われているのは事実です。このままの状態が続けば、将来的には完全閉館に至る可能性も高いと考えられています。
- なぜ同じ多摩ニュータウン内の「ぐりーんうぉーく多摩」は賑わっているのに、クロスガーデン多摩はダメだったのですか?
これは、施設のコンセプトとターゲット層の明確さの違いが大きいと思われます。「ぐりーんうぉーく多摩」もURの借地ですが、こちらは完全に車でのアクセスを前提とした「パワーセンター」と呼ばれるタイプの施設です。広大な駐車場を備え、大型の専門店を集積させることで、「週末に車で来てまとめ買いをするファミリー層」という非常に明確なターゲットを捉えることに成功しています。一方、クロスガーデン多摩は「駅からも歩けるし、車でも行ける」という立地が、かえってターゲットを曖昧にし、どっちつかずの中途半端な存在になってしまった可能性があります。戦略の明確さが、明暗を分けた一因と言えるかもしれません。
- 施設の運営会社はオリックス不動産ではないのですか?なぜ群馬県の会社が関わっているのですか?
クロスガーデン多摩はもともとオリックス不動産が開発した施設ですが、2024年8月時点で同社の公式サイトからは名前が消えています。登記情報などを調べると、土地の所有者はUR都市機構、建物の所有者はオリックス株式会社のようですが、施設のウェブサイト情報などから、現在の実質的な運営は群馬県に本社を置く株式会社関東建創が行っていると見られています。このように、開発した会社、土地の所有者、建物の所有者、そして実際の運営者がそれぞれ異なるという複雑な権利関係になっています。こうした複雑さが、施設全体の方向性を決める上での迅速な意思決定を難しくしている、もう一つの「隠れた要因」である可能性も考えられます。
