「感動の100円ぱん」として、その圧倒的なコストパフォーマンスと種類の豊富さで、多くのファンを魅了してきた京都伊三郎製ぱん。
しかし近年、SNSや地域情報サイトでは「閉店」の知らせが相次いで報告されており、ファンからは悲しみの声が上がっています。
また、一部でささやかれる「まずい」という噂は本当なのでしょうか。
京都伊三郎製ぱんの閉店相次ぐ理由は？
あれほど人気だった京都伊三郎製ぱんの閉店が続いている背景には、一つの理由だけではなく、社会情勢の変化やビジネスモデルの限界など、複数の要因が複雑に絡み合っているようです。
小麦など原材料や光熱費、人件費の高騰のため（そもそも安過ぎ）
京都伊三郎製ぱんの最大の魅力は、なんといっても「感動の100円」という驚異的な価格設定でした。
しかし、このビジネスモデルが近年の急激な外部環境の変化によって揺らいでいることが、閉店の最も大きな理由だと考えられます。
ご存知の通り、ここ数年で小麦粉や砂糖、油脂といったパン作りに欠かせない原材料の価格は世界的に高騰していますし、電気代やガス代などの光熱費、スタッフを雇用するための人件費も上昇の一途をたどっています。
ちなみに以下の農林水産政策研究所のデータにもあるように「小麦」はかなり値上がりしています。
（出典：農林水産政策研究所）
2024年から2025年にかけて円安傾向が続いたこともあり、仕入れコストの増大は避けられなかったようです。
元々、伊三郎製ぱんはセントラルキッチンでの一括生産や、お客様自身で袋詰めをしてもらうセルフサービス方式などを採用し、徹底的なコスト削減によって100円という価格を実現していました。
これは、いわば極限まで利益を削って成り立っていたモデルなのです。
そのため、昨今のコスト上昇分を吸収することが極めて難しくなりました。
多くの店舗で100円から120円、さらには136円へと価格改定を余儀なくされています。
この36%にも及ぶ大幅な値上げは、企業努力だけではどうにもならないほどのコスト圧力がかかっていたことの表れだと言えるでしょうが、値上げをしてもなお、以前のような利益を確保するのは難しく、体力の限界に達してしまった店舗から閉店という苦渋の決断に至っているのが現状なのだと思います。
コンビニやスーパーで安くて美味しいパンが買えるようになったため
もう一つの大きな理由として、競合環境の激化が挙げられます。
やはり、コンビニエンスストアやスーパーマーケットが提供するパンの品質が、ここ数年で飛躍的に向上したことは無視できない要因です。
かつて「安くてそこそこ美味しいパン」の代表格は、伊三郎製ぱんのような独立した低価格ベーカリーでした。
しかし今では、大手コンビニ各社が有名店監修の商品や、素材にこだわったプライベートブランドのパンを100円台で次々と発売しています。
スーパーでも、インストアベーカリーで焼きたてのパンが手頃な価格で手に入るようになりました。
消費者からすると、買い物ついでに気軽に、しかも安くて美味しいパンが買える選択肢が増えたわけです。
伊三郎製ぱんに行く「特別な理由」が薄れてしまった、とも言えるかもしれません。
日常的に食べるパンだからこそ、利便性の高いコンビニやスーパーに顧客が流れてしまうのは自然な流れであり、低価格帯の市場での厳しい競争にさらされた結果、客足が遠のいてしまった店舗もあったと考えられます。
フランチャイズモデルの限界や出店戦略と社会変化のミスマッチが生じたため
伊三郎製ぱんはフランチャイズ形式で急速に店舗網を拡大。
この戦略はブランドの知名度を短期間で上げる一方、各店舗の経営状況や品質管理にばらつきを生じさせるリスクもはらんでいます。
伊三郎製ぱんのような薄利多売のビジネスモデルでは、オーナーが本部に支払うロイヤリティの負担が経営を重く圧迫。
立地条件やオーナーの経営手腕によっては、売上を上げても利益がほとんど残らないという状況に陥りやすい状況です。
伊三郎製ぱんの店舗は、駐車場を備えた郊外のロードサイド型店舗も多く見られますが、人口減少や高齢化が進む地域では、車での来店を前提とした立地の集客力が以前よりも低下している様子もあります。
また、ライフスタイルの変化により、自宅や職場の近くで手軽に買い物を済ませたいというニーズが高まっており、わざわざパンを買いに行くという行動自体が減ってきていることも影響しているため。
実際に閉店に至った京都伊三郎製ぱんの店舗例
ここ数年で以下のような店舗が閉店しています。
- 京都伊三郎製ぱん 宇佐店（大分県宇佐市）
- 閉店日：2025年2月16日
- 京都伊三郎製ぱん 高槻松坂屋店・伊三郎製ぱんカフェ（大阪府高槻市）
- 閉店日：2025年6月15日
- 京都伊三郎製ぱん 大野城店（福岡県大野城市）
- 閉店日：2024年3月30日
- 京都伊三郎製ぱん 上津店（福岡県久留米市）
- 閉店日：2021年9月10日
- 京都伊三郎製ぱん 島原店（長崎県島原市）
- 閉店日：不明（2025年6月16日時点で閉店を確認）
- 京都伊三郎製ぱん 長崎・万屋店（長崎県長崎市）
- 閉店日：不明
地域で唯一の店舗だったり、百貨店内という好立地の店舗だったりと、多くのファンに惜しまれながらの閉店が続いていることがわかります。
京都伊三郎製ぱんに対する独自調査！まずい噂はなぜ？本当？
インターネット上では「伊三郎製ぱんはまずい？」といった声もあるようですが、この噂は本当なのでしょうか。
結論から言うと、「まずい」という評価はごく一部の意見であり、大多数の利用者は味と価格に満足していると考えられます。
例えば、Yahoo!マップの口コミ評価を見てみると、閉店した宇佐店は27件のレビューで平均4.49、営業中の鹿児島中山店は127件ものレビューがありながら平均4.1という高い評価を得ています。
これらの数字は、単純計算で利用者の8割以上が星4以上の高評価をつけていることを示しており、「コスパ最高」「安くて美味しい」「種類が豊富で選ぶのが楽しい」といった肯定的な意見が圧倒的多数を占めているのです。
では、なぜ一部で「まずい」という誤解が生まれてしまうのでしょうか。
それは、伊三郎製ぱんの特性と、食べる側の期待値との間にギャップが生じることがあるからだと考えられます。
| 誤解が生まれる理由 | 内容 |
|---|---|
| 「価格」への期待値のズレ | 100円台という価格から、高級ベーカリーのような特別な素材や凝った製法の味を無意識に期待してしまい、そのギャップから「思ったほどでもない」と感じてしまうことがあるためです。 |
| 食べる「タイミング」の問題 | 人気店ゆえに多くのパンを一度に焼き上げるため、購入するタイミングによってはパンが冷めていたり、時間が経って少しパサついていたりする場合があるためです。 |
| 「味の好み」の多様性 | 最大150種類ものパンが並ぶため、中にはチーズやスパイスを効かせた個性的な商品も含まれています。たまたま最初に手に取ったパンが、ご自身の好みと合わなかった可能性も考えられるのです。 |
このように、「まずい」という噂は、個人の味の好みや食べる状況に大きく左右されるものであり、客観的な事実とは言えないでしょう。
京都伊三郎製ぱんについておさらい？他のパン屋とどう違う？
多くの個人経営のパン屋さんでは、職人が粉の配合から成形、焼成までを一貫して行い、手間暇をかけて作られる分、価格は一つ300円以上することも珍しくありません。
一方、伊三郎製ぱんは、生地作りなどを一括して行うセントラルキッチン方式と、店舗では焼成に特化するという分業制を採用。
また、パンの袋詰めをお客様自身にお願いすることで、人件費を極限まで削減することで、100円台という驚きの価格を可能にしている最大の秘密なのです。
「圧倒的な種類の豊富さ」も大きな特徴で、高級食パン専門店のように特定の商品に特化するのではなく、菓子パン、惣菜パン、サンドイッチまで、毎日通っても飽きないほどのラインナップを揃えることで、「選ぶ楽しさ」を与えてくれています。
「京都」という名前がついていますが、本店は京都府亀岡市にあるものの、実際の店舗はフランチャイズとして関西や九州地方に多く展開しているという点も、一般的な地域密着型のパン屋さんとは異なる点です。
向いている人
これまでの特徴を踏まえると、京都伊三郎製ぱんは特に次のような方にぴったりのパン屋さんだと言えるでしょう。
高級さや特別な一日を演出するパンではなく、「日常に寄り添う、普段着のパン」を求めている方におすすめです。
- とにかく安く、お腹いっぱいパンを食べたい人
- 毎日違う種類のパンを試してみたい、飽き性の人
- 育ち盛りの子供がいるなど、食費を節約したいファミリー層
- たくさんのパンの中から宝探しのように選ぶのが好きな人
- 高級感や特別な味よりも、日常的に気軽に食べられるパンを求めている人
Q&A
最後に、京都伊三郎製ぱんに関してよくある質問や、少し踏み込んだ疑問についてQ&A形式でお答えします。
- なぜ「京都」という名前がついているのですか？
本店が京都府亀岡市に存在するためです。ただし、実際の店舗展開はフランチャイズビジネスが中心で、特に関西地方と九州地方に多くの店舗があります。古都・京都の持つ「本物」「美味しい」といったブランドイメージを活かしたネーミング戦略だと考えられます。
- 今でも100円でパンが買えますか？
残念ながら、原材料費の高騰などの影響で、多くの店舗で価格改定が行われていて2025年では120円や136円（税抜）が中心価格帯となっている店舗が多いようです。そのため、「ほとんどのパンが100円台で買えるお店」と認識しておくのが良いでしょう。
- 「136 Bakery」という名前のお店を見かけますが、伊三郎製ぱんとは違うのですか？
「136 Bakery」は、京都伊三郎製ぱんがリニューアルした新しいブランド名です。これは、価格改定後の中心価格である「136円」をブランド名に採用したものだと思われます。看板は変わっていますが、基本的なパンの種類やコンセプトは伊三郎製ぱんのものを引き継いでいることが多いですよ。
- フランチャイズということは、お店によって味が違うことはありますか？
伊三郎製ぱんはセントラルキッチンで生地を一括生産しているため、基本的な味のクオリティは全店で統一されるように管理されていますが、最終的な焼成や、サンドイッチの具材の量、陳列の仕方などは各店舗に委ねられています。そのため、焼き加減のわずかな違いや、作り手の丁寧さなどが、店舗ごとの「個性」として味に現れる可能性は十分に考えられます。「あのお店のカレーパンは特にサクサクで美味しい」といった評判が生まれるのは、そうした理由からかもしれません。
- 閉店する店が多い一方で、リニューアルや新規オープンする店もあるのはなぜですか？
伊三郎製ぱんというブランド全体が衰退しているというよりは、事業の「選択と集中」を行っている段階だと解釈するのが自然だと思います。採算が合わなくなった店舗は整理する一方で、まだ需要が見込める地域では店舗をリニューアルしたり、新たなコンセプトで新規出店したりしています。これは、ブランドを存続させ、時代の変化に対応していくための経営戦略の転換期と見ることができるでしょう。
