東京ドームシティの一角にあり、スパやショッピング、グルメが楽しめる融合商業施設「ラクーア」。
多くの人にとって馴染み深いこの場所ですが、近年、一部の店舗が閉店していることにお気づきの方もいるかもしれません。
なぜ、人気施設であるラクーアで店舗の入れ替えが起こるのでしょうか。
ラクーアの閉店なぜ?閉店理由は物価高?

ラクーア内の店舗が閉店する背景には、単純な人気不振だけではなく、社会全体の経済状況の変化や、ラクーア自身の戦略的なリニューアルが複雑に絡み合っていると考えられます。
一つの理由だけでなく、複数の要因が重なって店舗の入れ替えが起きているのです。
物価・人件費・光熱費などの高騰のため
閉店の直接的な引き金の一つは、運営コストの増加。
近年の世界的な物価上昇は、店舗で扱う商品の原材料費や仕入れ価格を押し上げています。
また、働き手の確保が難しくなる中で人件費も上昇傾向にあり、さらにエネルギー価格の上昇は、店舗運営に不可欠な電気代やガス代といった水道光熱費の大きな負担増につながっています。
ラクーアのような都心の一等地にある商業施設では、もともと家賃という大きな固定費がかかります。
それに加えて、これらの変動費が大きく上昇すると、店舗の利益は著しく圧迫されてしまうのです。
商品の価格にコスト上昇分を転嫁しにくい業態や、もともと利益率が低いビジネスモデルの店舗にとっては、経営の継続が非常に困難になったことが考えられます。
ラクーア自体も、施設の運営コスト増を理由に、スパの入館料を値上げしていることからも、その影響の大きさがうかがえます。
コスト上昇要因 | 内容 |
---|---|
原材料費の高騰 | 食材や商品の仕入れ値が上がり、販売価格に転嫁しにくい状況です。 |
人件費の上昇 | 最低賃金の上昇や人材不足により、従業員への給与負担が増えています。 |
光熱費の増加 | 電気やガスの料金が上がり、店舗の維持管理費用が大きくなっています。 |
物流コストの増大 | 輸送費も上昇しており、商品の仕入れや配送にかかる費用が増えています。 |
競合店の影響を受けたため
競合との競争激化も、閉店の要因として無視できません。
ラクーアが位置する水道橋・後楽園エリアだけでなく、電車で少し移動すれば、新宿、渋谷、池袋など、巨大な商業施設がひしめき合っています。
消費者は多くの選択肢を持っており、その中で「わざわざラクーアに行く理由」を各店舗が提供し続けなければ、顧客を惹きつけることは難しいのです。
また、コロナ禍の後押しもあり、近年ではオンラインショッピング(EC)の存在感が非常に大きくなっています。
自宅にいながら手軽に買い物ができ、価格も比較しやすいECサイトは、実店舗にとって強力なライバルで、アパレルや雑貨といった商品は、オンラインで済ませてしまう人も増えています。
このような状況下で、実店舗ならではの「体験価値」や「接客の魅力」を十分に提供できなかった店舗は、厳しい競争の中で淘汰されてしまった可能性があります。
ラクーア自体も、競合施設との差別化を図るために、常に施設の魅力を高める努力をしているのです。
大規模リニューアルのため
施設の戦略的リニューアルが大きな要因であるため。ラクーアは2023年に開業20周年を迎え、それに合わせて過去最大規模となるリニューアルを行いました。
このリニューアルは、単に古くなった部分を新しくするというだけではなく、東京ドームシティ全体を「世界一のエンターテインメントシティ」へと進化させるという、大きなビジョンに基づいた戦略的なプロジェクトの一環であるためです。
この大規模な再開発計画の中で、ラクーアは施設全体のブランドイメージやコンセプトをより明確に打ち出そうとしています。
「DELI&DISH」というフードゾーンを新設して「持ち帰り(テイクアウト)」需要に応えたり、「AKOMEYA TOKYO」や「キルフェボン」といった、少し高級で「ご褒美感」のあるテナントを積極的に誘致したりしています。
コロナ禍を経て変化した人々のライフスタイルに対応し、より購買力の高い客層をターゲットに据えることで、施設全体の収益性を高める狙いがあるためです。
したがって、個々の店舗の閉店は、単なる経営不振というミクロな視点だけでなく、ラクーアという施設全体が新しいステージへと生まれ変わるための「新陳代謝」と捉えるのが最も的確な見方で、施設の新しいコンセプトに合致しない店舗や、新たなターゲット層に響かないと判断された店舗は、契約更新のタイミングなどで戦略的に入れ替えられたのでしょう。
ラクーアのリニューアル概要※2023年
2023年にかなりリニューアルされたのですが詳細をまとめますね。
リニューアル内容 | 詳細 | 開業・リニューアル時期 |
---|---|---|
ヒーリング バーデ(9F) | エリア拡張、室温約45℃の女性専用岩盤浴、低温サウナ室、クールダウンルーム、休憩ルームを増設。 | 2023年4月中旬~10月5日 |
オープンデッキエリア(7F) | 開放感のあるフットプールとバーを新設。景色を楽しめるフットプールが登場。 | 2023年4月中旬 |
リラックスラウンジ | 約130席のリクライニングチェア更新、内装リフレッシュ、設備改修。 | 2023年4月中旬 |
その他 | 炭酸泉・酸素泉、フィンランドサウナ、日本初のヴィシー(シャワー)などを導入。入館料に変動価格制を2024年10月1日より導入。 | 2023年10月5日、2024年10月1日 |
完全個室サウナ「Rentola(レントラ)」 | ラクーアビル最上階にオープンした初の完全個室プライベートサウナ。スタンダード5室(最大2名)、プレミアム1室(最大4名)の計6室。各室20~25平方メートルで、サウナ室、水風呂、ととのいスペース完備。予約時に80℃・90℃・100℃から温度選択可能。 | 2023年4月15日 |
フードゾーン「DELI&DISH(デリ&ディッシュ)」 | 26店舗が集結し、テイクアウトの惣菜やスイーツを提供。東京初出店や商業施設初出店の店舗も含まれる。 | 2023年4月15日 |
ショップ&レストラン | 2023年3月~5月にかけて約20店舗が新規・改装オープン。香港点心専門店「添好運」やライフスタイルショップ「AKOMEYA TOKYO」などが出店。 | 2023年3月~5月 |
共用部分 | ラクーアガーデン、エントランス、2F~4Fの休憩スペース、トイレなどをリニューアル。休憩や飲食に便利なベンチを増設。 | 2023年3月 |
ラクーアの過去に閉店した店舗
ラクーアでは、開業以来、時代のトレンドや施設の戦略変更に合わせて、数多くの店舗が入れ替わってきました。
これは、常に魅力的であり続けるための自然な変化とも言えます。
- 2014年1月30日:新星堂 閉店
- 2021年1月17日:カリカチュア・ジャパン 閉店
- 2021年1月18日:だがし夢や 閉店
- 2023年1月9日:WEGO 閉店
- 2023年2月末日:ムーミン ベーカリー&カフェ 閉店
- 2023年5月30日:神戸元町ドリア 閉店(同日より「チーズ&ドリア.スイーツ」へ業態変更しリニューアルオープン)
- 2025年1月31日:Atsushi Hatae 閉店
- 2025年5月19日:ムレスナティー 閉店
これらの店舗の変遷を追うと、ラクーアの戦略の変化が見えてくるようです。
開業当初や2010年代は、比較的若い世代をターゲットにしたアパレルブランドや雑貨店が多かった印象ですが、2023年の大規模リニューアル以降は、食やライフスタイルを豊かにするような、より上質でこだわりのある店舗が増えています。
ラクーアがターゲットとする顧客層を、より購買力のある大人世代へとシフトさせ、長く滞在して楽しめる「街」としての魅力を高めようとしていることの表れだと思われます。
ラクーアについておさらい
改めて、ラクーアがどのような施設なのか、その基本的な情報と魅力について振り返ります。
概要
ラクーアは、2003年5月1日に開業した、東京ドームシティ内にある融合商業施設です。
その最大の特徴は、「スパ ラクーア」という天然温泉施設を中核に、ファッションやコスメを扱うショップ、多彩なレストラン、そしてジェットコースターなどのアトラクションが一体となっている点です。
「東京の真ん中でリフレッシュを楽しむ」というコンセプトのもと、当初は社会人の女性をメインターゲットとしてスタートしましたが、近年のサウナブームの追い風もあり、男性の利用者も大幅に増加し、現在では男女比がほぼ半々になるほど、幅広い層に支持される施設へと成長しています。
その名前は、フランス語の「La(ラ)」、日本語の「楽(ラク)」、そしてラテン語で水を意味する「Aqua(アクア)」を組み合わせたもので、施設全体のコンセプトを象徴しています。
ラクーアについて独自調査
利用者たちはラクーアに対してどのような印象を持っているのでしょうか。
口コミサイトなどの情報を基に、ポジティブな意見とネガティブな意見の割合を分析し、具体的な声を拾い集めてみました。
割合的にはざっくり以下のような感じでした。
全体として、施設のクオリティやサービスに対する満足度は非常に高いことがわかります。
Q&A
ラクーアについて、多くの人が疑問に思う点をQ&A形式でまとめました。
- ラクーアの運営会社はどこですか?
株式会社東京ドームが運営しています。なお、株式会社東京ドームは、大手不動産会社である三井不動産の連結子会社です。
- スパ ラクーアの料金はいくらですか?
スパ ラクーアでは、利用する日によって料金が変わる「変動価格制」を導入しています。大人の入館料はベーシック料金で3,500円からですが、土日祝日などは料金が上がります。また、深夜1時から朝6時までの滞在には深夜割増料金が、岩盤浴施設「ヒーリング バーデ」の利用には別途料金が必要です。
- 子供も利用できますか?
安全管理上の理由から、0歳から5歳までのお子様は入館することができません。6歳から17歳までの方は、保護者の方(6歳から11歳までは同性の保護者)と一緒であれば、18時まで利用可能です(最終入館は15時)。ただし、岩盤浴「ヒーリング バーデ」は18歳未満の方は利用できません。
- ラクーアのリニューアルはいつ行われましたか?
開業20周年を迎えた2023年に、過去最大規模となるリニューアルが順次実施されました。このリニューアルでは、新しいフードゾーン「DELI&DISH」がオープンしたほか、スパエリアの拡張やプライベートサウナの新設など、施設全体が大きく生まれ変わっています。