「最近、近所の松屋が閉まった…」「松屋って閉店ラッシュなの?」そんな声を耳にすることが増えました。
本記事では、松屋の閉店や一時休業、24時間営業の見直しの本当の理由を、徹底的に調査・紹介します。
松屋の閉店ラッシュ理由は?一時閉店や24時間やめた店舗も?

松屋の店舗をめぐる最近の動きは、「閉店ラッシュ」と一括りにできるほど単純な話ではなく、経済状況の変化への対応や、会社の未来を見据えた戦略的な判断が隠されています。
ここでは、閉店や営業方針の変更に至る複数の理由を、一つひとつ丁寧に解き明かしていきます。
人件費や物価の高騰、人手不足のため

松屋の店舗運営に大きな影響を与えているのが、昨今の経済状況で、原材料費や人件費、光熱費といったコストの上昇は、店舗の経営を直接圧迫する大きな要因となっています。
これは松屋に限った話ではなく、多くの飲食店が直面している課題なのです。
実際に、松屋フーズは2025年4月に一部商品の値上げを実施し、看板メニューの「牛めし(並盛)」は430円から460円に、「牛焼肉定食」は840円から890円へと価格が改定されています。
この値上げの背景には、主力食材であるコメの価格が高止まりしていることや、その他の原材料費、さらには電気代などの光熱費、従業員の給与となる人件費が軒並み上昇していることがあります。

政府はコメの価格を安定させるために備蓄米を市場に放出していますが、それでも価格はなかなか下がらないのが現状で、コスト増は、メニューの価格に反映せざるを得ない状況を生み出しています。
また、人手不足も深刻な問題で、深夜帯の従業員を確保するのは難しく、十分なスタッフがいない店舗では、やむを得ず深夜の営業を休止するケースが出てきています。
24時間営業は松屋の魅力の一つでしたが、少ないお客様のために店舗を開け続けるコストと、人手不足の問題を天秤にかけた結果、営業時間の短縮という判断に至る店舗があるのは自然な流れかもしれません。

コスト増と人手不足は、店舗の収益性をじわじわと悪化させていて利益が出にくい、あるいは赤字になってしまう店舗をそのまま維持し続けるのは、企業として難しい判断です。
結果として、採算が取れない店舗から閉店していく、という経営判断につながることは十分に考えられます。
| コスト上昇の要因 | 内容 | 店舗運営への影響 |
|---|---|---|
| 原材料費の高騰 | コメや肉類などの食材価格が世界的に上昇しています。 | メニューの値上げや、利益率の低下につながります。 |
| 人件費の上昇 | 労働人口の減少や最低賃金の上昇で、人件費が増加しています。 | 特に深夜帯の人員確保が難しくなり、営業時間の短縮を迫られることがあります。 |
| 光熱費の高騰 | 電気代やガス代が値上がりし、店舗の固定費を押し上げています。 | 24時間営業を続ける店舗の負担が、特に大きくなっています。 |
| 物流コストの増加 | 燃料費の上昇やドライバー不足により、食材の配送コストも上がっています。 | 食材の安定供給やコスト管理が、以前より難しくなっています。 |
牛丼以外の店舗へ変更し、リスクヘッジを図っているため
松屋の店舗が閉店するもう一つの重要な理由は、松屋フーズ全体の事業戦略、すなわち「店舗ポートフォリオの最適化」のためです。
単に不採算店を閉めるという後ろ向きな動きではなく、会社の資産(店舗)を組み替えて、より強い収益構造を作り上げるための前向きな戦略なのです。

最近の松屋の動きで非常に特徴的なのが、既存の「松屋」単独の店舗を、とんかつ専門店「松のや」やカレー専門店「マイカリー食堂」などを併設した「複合店」へとリニューアルするケースが急増していて、公式サイトの「新店・一時閉店一覧」を見ると、新規オープンの店舗の多くが「(松のや併設)」と記載されているのがわかります。
この戦略の目的は、一つの店舗で複数のブランドを展開することで、より幅広いお客様のニーズに応え、客単価を上げることにあると考えられます。
「牛めしが食べたい」というお客様だけでなく、「とんかつが食べたい」というお客様も取り込むことができるため、店舗全体の売上向上が期待できるのです。

例えば、これまで松屋しかなかった場所に「松のや」が併設されれば、家族連れなど、より多様な客層が訪れるきっかけになるかもしれません。
実際に、改装のために一時閉店し、「松のや」併設店としてリニューアルオープンする事例は全国で報告されています。
また、西新宿にあった店舗は「別業態への転換」を理由に閉店しており、これもポートフォリオ最適化の一環と見ることができます。

松屋フーズは、「松軒中華食堂」、「すし松」、石焼業態の「トゥックン²」など、牛めし以外の新業態にも積極的に挑戦していて、牛丼市場だけに依存するリスクを減らし、会社の成長を多角的に支えるための重要な投資を行っています。
つまり、古い「松屋」を閉店して得た資金や人材を、こうした新しい複合店や新業態に再配分しているのです。
この「スクラップ&ビルド」こそが、閉店の裏にある大きな理由だといえるでしょう。
| 松屋フーズの業態転換戦略 | 目的 | お客様にとってのメリット |
|---|---|---|
| 松屋 → 松屋・松のや併設店 | 客単価の上昇と、とんかつ好きの顧客層を取り込むためです。 | 牛めしもとんかつも、その日の気分で選べるようになります。 |
| 松屋 → 松屋・マイカリー食堂併設店 | カレーという強力なジャンルを加え、顧客の選択肢を広げるためです。 | 松屋のカレーとは一味違う、本格的な専門店のカレーが楽しめます。 |
| 既存店 → 新業態(すし松など) | 新たな市場を開拓し、会社の新たな成長の柱を育てるためです。 | 松屋フーズが展開する、牛丼以外の新しい美味しさに出会えます。 |
| スクラップ&ビルド | 採算の悪い店舗を閉め、より立地の良い場所に複合店として再出店するためです。 | より新しく、きれいで快適な店舗を利用できる機会が増えます。 |
一時閉店や24時間やめた店舗も!なぜ方針変更?
まず、「一時閉店」の最も多い理由は、店舗の「リニューアル・改装工事」で、従業員の負担を減らし効率を上げるためのセルフサービス方式への変更工事や、前述した「松のや」などを併設する複合店への大規模な改装が目立ちます。
つまり、一時閉店は、より快適で魅力的な店舗に生まれ変わるための準備期間なのです。
期間は工事の規模によりますが、1週間から2週間程度が多いようです。
ただし、工事の進捗によっては期間が延長されることもあるため、公式サイトなどで最新情報を確認するのが確実です。
次に、「24時間営業の見直し」ですが、大きなきっかけとなったのは、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大です。

政府や自治体からの外出自粛要請に応える形で、お客様と従業員の安全を確保するために、一部店舗で深夜時間帯の営業を休止する措置が取られました。
この流れは、コロナ禍が落ち着いた後も続いていて、先ほども触れた「人手不足」と「深夜帯の需要の変化」など働き方の多様化などにより、以前に比べて深夜に外食をする人が減ったエリアもあります。
需要の少ない時間帯に店舗を開け続けることは、人件費や光熱費の面で非効率だと判断され、営業時間の見直しにつながっているのです。
本当に閉店ラッシュ?過去に閉店した店舗例

「閉店ラッシュ」という言葉が本当かどうかを判断するために、実際に過去に閉店した店舗の例を見てみましょう。
確かに、改装や業態転換を伴わない、完全な閉店事例も存在します。
以下は、資料から確認できた閉店店舗の一部です。
- 2025年8月21日:松屋 本蓮沼駅前店 閉店
- 2024年10月21日:松屋 平間店 閉店
- 2024年6月30日:松屋サテライト住吉店 閉店
- 2024年3月8日:松屋 松原団地店 閉店
- 2024年2月29日:松屋 城清水店 閉店
- 2024年2月29日:松屋 清水南店 閉店
- 2024年1月20日:松屋 石神井公園店 閉店
- 2024年1月15日:松屋 岡山商科大前店 閉店
- 2023年7月31日:松屋 多治見店 閉店
- 2023年7月31日:松屋 東比恵店 閉店
- 2023年7月30日:松屋 明大前店 閉店
- 2023年4月5日:松屋 小山店 閉店
- 2023年3月24日:松屋 四日市富田店 閉店
- 2023年2月10日:松屋 麻生店 閉店
- 2023年1月10日:松屋 関学店 閉店
- 2022年10月25日:松屋 渋谷宮益坂上店 閉店
- 2022年9月28日:松屋 大和田店 閉店
- 2022年8月25日:松屋 所沢店 閉店
- 2022年7月20日:松屋 清瀬店 閉店
- 2022年6月9日:松屋 越谷駅前店 閉店
- 2022年4月30日:松屋 新大宮店 閉店
- 2022年4月30日:松屋 三宮東店 閉店
- 2022年4月28日:松屋 武蔵境南口店 閉店
- 2022年3月29日:松屋 天理PA(下り線)店 閉店
- 2022年3月24日:松屋 浦和店 閉店
- 2021年10月31日:松屋 北越谷店 閉店
- 2021年7月31日:松屋 今出川店 閉店
- 2021年5月30日:松屋 東久留米店 閉店
- 2021年5月24日:松屋 大野城店 閉店
- 2021年3月30日:松屋 天理PA(上り線)店 閉店
- 2021年2月28日:松屋 静岡御幸町店 閉店
- 2021年2月24日:松屋 玉造店 閉店
- 2021年2月6日:松屋 蒲田店 閉店
- 2021年1月28日:松屋 葛西長島陸橋店 閉店
- 2021年1月27日:松屋 町田東口店 閉店
- 2021年1月25日:松屋 柏東口店 閉店
- 2021年1月24日:松屋 目白店 閉店
- 2021年1月19日:松屋 仙台クリスロード店 閉店
- 2020年12月30日:松屋 東池袋店 閉店
- 2020年12月30日:松屋 池袋サンシャイン通り店 閉店
- 2020年12月30日:松屋 池袋西口店 閉店
- 2020年12月23日:松屋 立川曙橋店 閉店
- 2020年12月17日:松屋 姫路リオス店 閉店
- 2020年12月4日:松屋 豊洲IHIビル店 閉店
- 2020年11月30日:松屋 心斎橋店 閉店
- 2020年11月30日:松屋 横浜アリーナ前店 閉店
- 2020年11月30日:松屋 成増店 閉店
- 2020年11月30日:松屋 神田須田町店 閉店
- 2020年11月25日:松屋 堀川丸太町店 閉店
- 2020年11月25日:松屋 関西空港店 閉店
- 2020年11月25日:松屋 浅草店 閉店
- 2020年11月25日:松屋 広島金座街店 閉店
- 2020年10月31日:松屋 後楽園店 閉店
- 2020年9月18日:松屋 平針駅前店 閉店
- 2020年8月20日:松屋 姫路リオス店 閉店
- 2020年7月31日:松屋 久米田店 閉店
- 2020年7月31日:松屋 中島新町店 閉店
- 2020年5月27日:松屋 姫路店 閉店
- 2020年5月26日:松屋 新宿歌舞伎町店 閉店
- 2020年2月15日:松屋 赤坂6丁目店 閉店
- 2020年2月13日:松屋 長野若里店 閉店
- 2020年1月15日:松屋 恵比寿店 閉店
- 2020年1月6日:松屋 高田馬場1丁目店 閉店
- 2018年10月28日:松屋 渋谷桜丘店 閉店
- 2016年11月25日:松屋 岡本店 閉店
- 2016年6月18日:松屋 池袋東口駅前店 閉店
- 2016年6月3日:松屋 代々木南店 閉店
- 2016年6月3日:松屋 鶴間店 閉店
- 2016年5月11日:松屋 堀田店 閉店
- 2016年3月12日:松屋 神保町店 閉店
- 2016年3月2日:松屋 岩塚店 閉店
- 2015年12月10日:松屋 東戸塚店 閉店
- 2015年10月31日:松屋 高針店 閉店
このように見ると、全国各地で閉店している店舗があるのは事実です。
しかし、松屋フーズは全国に1000店舗以上を展開しており、一方で新規出店も積極的に行っています。
2025年の秋だけでも、北海道から熊本まで、30店舗以上の新規オープンが予定されており、そのほとんどが「松のや」併設店です。
「閉店」の裏では、それを上回る勢いで「新しい形の店舗」が生まれているので、「閉店ラッシュ」というよりも、「店舗の入れ替えと進化の時期」と捉える方が、より実態に近いのかもしれません。
松屋はどんな人に向いている?
こうした松屋の戦略的な変化は、私たち利用者にとっても無関係ではありません。
新しい松屋のスタイルは、特に次のような人にとって、より魅力的な場所になっていると言えるかもしれません。
- 一つの場所で色々なメニューを楽しみたい人
- 牛めしも食べたいけど、とんかつも捨てがたい、という欲張りな人
- 新しいもの好きで、期間限定メニューだけでなく新業態も試してみたい人
- 店員さんとのやり取りを最小限に、セルフサービスで気兼ねなく食事を済ませたい人
- 活動時間が主に日中で、深夜に飲食店を利用することが少ない人
Q&A
松屋の閉店や方針変更に関して、よくある質問についてお答えします。
- 松屋は全部24時間営業じゃなくなったの?
いいえ、全ての店舗で24時間営業をやめたわけではありません。人手不足や深夜の利用者が少ない一部の店舗で、深夜営業を休止している場合があります。特に駅前の店舗や繁華街の店舗など、多くの店舗では引き続き24時間営業を続けています。深夜に利用する予定がある場合は、公式サイトの店舗検索で事前に営業時間を調べておくと確実で、安心ですよ。
- 「一時閉店」って、どれくらいの期間で終わることが多いの?
店舗の改装工事のための「一時閉店」は、ケースバイケースですが、1週間から2週間程度で再開することが多いようです。例えば、八王子市の南大沢店では、当初1週間の予定が2週間に延長された例があります。一方で、沖縄県の豊見城店では約4日間でリニューアルオープンした例もあり、工事の規模によって期間はまちまちです。公式サイトの「新店・一時閉店一覧」で告知されることが多いですが、店舗に貼り紙が出るのは休業の直前ということもあるみたいなので、よく利用する店舗の動向は気にかけておくと良いかもしれません。
- 閉店した松屋の跡地って、どうなることが多いの?
最も多いのが、松屋フーズの別のブランドに変わる「業態転換」です。例えば、併設されていた「マイカリー食堂」が「松のや」に変わる、あるいは全く新しい業態の店舗になるといったケースです。これは、同じ場所でより収益性の高いビジネスを狙う戦略ですね。一方で、かつて存在した「神戸らんぷ亭」という牛丼チェーンのように、同じ運営会社が全く別のジャンルの飲食店をオープンさせる例もあります。また、ホテルのテナントとして入っていた店舗が賃貸契約の終了で完全に撤退するなど、その後の活用方法は様々で、一概には言えないのが実情です。








