水天宮前に店を構え、フランス菓子の華やかな世界観を届けてきた「オクシタニアル」。
マカロンやハリネズミケーキが話題となり、長らく多くのファンを魅了してきた存在でした。

(出典:オクシタニアル)
ところが2025年3月15日をもって店舗が閉鎖され、惜しまれつつも撤退してしまったのです。
オクシタニアル閉店理由は?なぜ撤退したのか考察
なぜオクシタニアルは閉店に至ったのか、そして復活やリニューアルの見通しなどを調査した上で、考察を交えて紹介します。
閉店理由1:クラブハリエの新店舗としてリニューアルするため

(出典:オクシタニアル)
オクシタニアルは、滋賀県近江八幡市に本拠を置くクラブハリエの手によって2014年1月、東京の水天宮前にオープン。
クラブハリエといえば、ふんわりとしたバームクーヘンで全国的に知名度を高めた企業。
以前は2011年まで神谷町にもオクシタニアル店舗があったのですが、一度閉店を経て再上陸したのが水天宮前店だったのです。※神谷町店は2008年1月にオープン
そのように一度閉じてもブランドを再編してきた同社は、2025年3月15日の閉店を機に、クラブハリエとして新しい店舗を出す方向にかじを切ったのではないでしょうか。
マカロンやハリネズミケーキなどのオクシタニアルらしい商品を惜しむ声が多数あった一方、今後は看板が「クラブハリエ」の名に変わり、新たなスイーツの展開を見せるのではないでしょうか。
華やかなフランス菓子をベースに持つブランドとしての強みを引き継ぎつつ、バームクーヘンを中心としたラインナップで、地域に再アピールする計画とも考えられます。
2014年の再上陸から10年以上、たくさんの新作ケーキや焼き菓子を届け続けたオクシタニアル。
そこへ新店としてクラブハリエを出すことで、さらなるブランド拡大を狙う思惑があるのではないでしょうか。
時代の変化による経営戦略の組み直しとも思われますし、企業としてはトータルのイメージをそろえる絶好のタイミングでもあるようです。
運営会社のクラブハリエですが博多店も過去に閉店しており、全国的に見直しをしているようにも思えます。
閉店理由やその背景についてはこちらの記事にまとめています。

閉店理由2:原材料費の高騰や人手不足の影響を受けて一時閉店するため
昨今は世界的な情勢の変動から、洋菓子をはじめとした食品の原材料費が軒並み上昇しているのです。
オクシタニアルはフランス菓子専門ということもあり、バターなど輸入食材や厳選素材をたくさん使っていましたね。
値段が高騰すればコスト面での負担が大きく、今までどおりの価格帯で続けるのは難しくなると考えられます。
さらに、人手不足が喫緊の課題となっていたことも推察されます。
以下の厚生労働省の図のように近年の日本では、最低賃金の引き上げや原材料の価格上昇が全国的な課題になっていますよね。

(出典:厚生労働省)
オクシタニアルが位置していた東京都も、最低賃金を令和6年には前年より50円も上げており、この動きは今後も加速すると思われます。

(出典:厚生労働省)
日本国内では飲食業全体がスタッフの確保に悩んでおり、高度なパティシエ技術を要求されるオクシタニアルのような店だと、その負担は相当なものだったようです。
この三つを同時に実現するには、一時閉店して仕切り直しをするのもやむを得ない面があるのではないでしょうか。
新店舗としてクラブハリエにリニューアルすることで、メニュー構成を変えつつ安定したブランド体制を敷こうとしているようにも思われます。
コスト増と人材不足が重なると事業継続は苦しくなるので、今回の決断もやむなしだったのではないでしょうかね。
閉店理由3:メインの従業員が独立するため
2025年3月15日閉店
以前より気になって保存していたお店。近くまで行く機会があり行ってみたところ3月15日で閉店とのこと。横で店員さんがお話しされていたこととして、ケーキを作っていた方が独立すること、まだ店舗は決まっていないこと、ここのお店の後はクラブハリエになることなどを仰っていました。
最後に行けてよかったー。(引用:食べログ)
オクシタニアルの工房には、海外の製菓コンクールでも活躍した実力派のパティシエが在籍していました。
海外の受賞歴を持つ中山和大シェフも注目されていた一人だと思います。

(出典:オクシタニアル)
- 長野県出身
- ホテル「マンダリンオリエンタル東京」などで修行を積み、2012年にクラブハリエに入社
- 2014年にオクシタニアルのシェフパティシエに就任
- 国内外の製菓コンクールで数々の受賞歴を持ち、「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」では2011年に4位、2015年には日本代表キャプテンとして準優勝を果たす
噂によると閉店の理由の一つにケーキを担当していた従業員の独立が関わっていそうです。
そうしたメインパティシエの独立は、高品質なケーキを支えてきた大きな柱が抜けることを意味するのです。
店頭で販売されていたハリネズミをモチーフにしたキュートなケーキや、季節のフルーツをぎゅっと閉じ込めたスイーツの数々は、そうした匠の技術あってこそ出来上がっていたのではないでしょうか。
そこで、メインパティシエが新しいチャレンジに踏み出すのなら、残ったスタッフだけでは同水準を維持するのは難しいと考えられます。
これだけが閉店理由になったとは考えにくいですが、お客様が魅力を感じていたオクシタニアルらしさを守りにくいとなると、ブランドの方向性を改めて練り直すケースも往々にありえます。
オクシタニアル閉店したけど10年以上愛されたお店
オクシタニアルは2014年に水天宮前へ再上陸して以来、地元の方や遠方からの来店客まで幅広い層に愛されてきたのです。
人気だった理由って?

(出典:オクシタニアル)
人気だった理由はいくつも挙げられますが、やはり大きいのは高いクオリティのフランス菓子ではないでしょうか。
①エリソン
ハリネズミを模したユニークなケーキで、SNSでも話題となりました。チョコレートムースとキャラメルの組み合わせが絶妙で、見た目の可愛さと味の良さが両立した商品です。
②イチゴのタルト
甘くジューシーなイチゴとタルト生地のバランスが絶妙で、上品な味わいが特徴です。特に手土産や贈り物としても人気がありました。
③ショコラオランジュ
チョコレートとオレンジの風味が楽しめるケーキで、濃厚な味わいが特徴です。オクシタニアルの代表的なメニューの一つとして知られています.
④モラン
濃厚なチョコレートムースの中にマンゴーとパッションフルーツのジュレが入ったケーキ。鮮やかな色合いとフルーツの酸味が楽しめる逸品です。
⑤マカロン
ダロワイヨやピエール・エルメなどの有名店よりも少し大きめで、軽い歯触りと豊かな風味が特徴。季節限定のフレーバーもあり、幅広い層に支持されていました.
⑥コッコ
卵型の焼き菓子で、新しい命の誕生をイメージした商品。卵とバニラの風味が豊かで、見た目の可愛さから手土産としても人気がありました.
色とりどりのマカロンはもちろん、ふわりと口どけのいいガトーや、ハリネズミをかたどったユニークなケーキなど、多彩なスイーツが勢ぞろいしていましたよね。
また、オクシタニアルの店内は南フランスをイメージした明るい黄色を基調としており、そこに併設されたカフェスペースはこぢんまりしながらも清潔感と温かみがある空間でした。
座席数は12席ほどしかなかったため、休日のティータイムにはよく満席となり、待っている人が出るほど人気がありました。
一方で接客面も魅力でしたね。
店頭で悩んでいると、スタッフがマカロンやパウンドケーキの味わいを丁寧に説明してくれたのです。
オクシタニアルがこれほど愛されたのは、こうした優れた商品開発力とホスピタリティの相乗効果とも考えられますね。
そもそも運営会社クラブハリエとは
クラブハリエは、和菓子の「たねや」を母体に持つ企業。
バームクーヘンという洋菓子で大きく飛躍したイメージがあるのではないでしょうか。
そもそも「バームクーヘンなんて」と敬遠されがちだった時代に、職人が一層一層手焼きで焼き上げるしっとりフワフワの食感を打ち出し、百貨店で試食販売をするなど攻めの姿勢でブランドを確立してきたそうなのです。
そんなクラブハリエがフランス菓子に特化する形でオクシタニアルを立ち上げたのが、2008年1月のことでしたね
2011年7月まで神谷町で展開し、一度撤退してから大阪での展開を経て、2014年に水天宮前で本格的な旗艦店となった流れのようです。

(出典:オクシタニアル)
フランス国家最優秀職人(MOF)ステファン・トレアンさんの監修や、国内外のコンクールで高評価を獲得したシェフの存在も相まって、一気に注目度が増したのではないでしょうか。
さらに、クラブハリエという後ろ盾があるため、高品質な材料の仕入れルートや、洗練されたブランドデザイン、商品開発のノウハウを活用できたと思われます。
つまり、和菓子からスタートした「たねや」の伝統と、洋菓子部門としての「クラブハリエ」のノウハウが詰まった一つの集大成がオクシタニアルだったのです。
オクシタニアルが閉店したのは2025年3月15日ではありますが、クラブハリエとして再度ブランドを立ち上げる以上、今まで培ってきた技術と知見が消えるわけではないです。
ファンからすれば店名が変わってしまうことに惜別の念はあるにせよ、これまで以上にパワーアップした形のクラブハリエが水天宮前で見られるかもしれませんし、今後への期待が高まります。