一時期、一大ブームを巻き起こした高級食パン。
その中でも、比較的手頃な価格とこだわりの製法で人気を集めた「一本堂」ですが、ここ数年で「閉店ラッシュ」という言葉をよく耳にするようになりました。
一体なぜ、あれほど人気だった一本堂の店舗が次々と姿を消しているのでしょうか。
本記事では、その背景にある理由や、多くの人が気になる「食パンは本当に美味しいのか?」という疑問の真相について、詳しく調査・紹介していきます。
一本堂の閉店ラッシュなぜ?食パンがまずい・美味しい?

全国で人気を博した焼きたて食パン専門店「一本堂」ですが、2022年頃から閉店する店舗が急増しています。
その背景には、単一ではない、いくつかの要因が複雑に絡み合っていると考えられます。
物価・人件費の高騰のため
閉店ラッシュの最も大きな直接的要因は、運営コストの急激な上昇です。
パンの主原料である小麦の価格が、国際情勢の影響で大きく値上がりしました。
これに加えて、電気代やガス代といった光熱費、さらには最低賃金の上昇に伴う人件費も高騰し、店舗経営を直接圧迫する形となったのです。
一本堂は、他の高級食パン専門店と比較すると価格が安めに設定されているため、コスト上昇分を価格に転嫁しにくかったという事情もあると思われます。

値上げをすればお客様が離れてしまうかもしれませんし、かといって価格を据え置けば利益が出ないという、非常に厳しい状況に追い込まれた店舗が多かったのです。
実際に、帝国データバンクの調査では、2025年の飲食店倒産件数は過去最多ペースで推移しており、その多くがコスト高を理由に事業継続を断念している状況です。
| 閉店したと考えられる店舗例 | 閉店日 | 考えられる背景 |
|---|---|---|
| 一本堂 釧路愛国店 | 2024年3月10日 | 原材料費や光熱費の高騰が、地方都市での経営を特に圧迫した可能性があります。 |
| 一本堂 札幌琴似店 | 2023年12月30日 | 札幌のような都市部でも、人件費を含む運営コストの上昇が利益を圧迫したと考えられます。 |
| 一本堂 八王子横山店 | 2022年8月31日 | 閉店が相次いだ2022年後半は、特に物価高騰の影響が顕著になった時期でした。 |
| 一本堂 平和島駅前店 | 2022年8月27日 | 駅前という好立地は家賃も高いため、コスト増が経営に与える影響は大きかったと思われます。 |
競合店の影響を受けたため
高級食パンブームによって、非常に多くの専門店が乱立したことも、閉店ラッシュの大きな原因の一つです。
一時は「どこを歩いても高級食パン店がある」という状況で、お客様の需要をはるかに超える数の店舗が存在していました。

ブームが落ち着き始めると、限られたお客様を多くの店で奪い合う、厳しい競争状態に陥ったのです。
一本堂だけでなく、「乃が美」や「銀座に志かわ」といった他の有名チェーンも同様に閉店が相次いでいることからも、業界全体の供給過多がうかがえます。
また、競合は専門店だけではありません。今ではスーパーやコンビニでも、手軽に美味しいパンが買えるようになりました。
わざわざ専門店に足を運ばなくても満足できる消費者が増えたことも、一本堂のような専門店にとっては厳しい向かい風となったと考えられます。
| 閉店したと考えられる店舗例 | 閉店日 | 考えられる背景 |
|---|---|---|
| 一本堂 十条銀座店 | 2022年8月31日 | 活気のある商店街は競合も多く、価格や品揃えでの差別化が難しかったのかもしれません。 |
| 一本堂 世田谷烏山店 | 2022年8月14日 | 住宅街が近いエリアでは、スーパーや地域密着型のパン屋など、間接的な競合も多かったと考えられます。 |
| 一本堂 八千代中央駅前店 | 2022年9月11日 | 駅前は集客しやすい反面、他のチェーン店も出店しやすく、競争が激化しやすい場所です。 |
| 焼きたて食パン専門店 一本堂 長嶺店 | 2022年9月17日 | 郊外の店舗でも、ブームの終焉とともにお客様の足が遠のき、経営が厳しくなったと思われます。 |
多角的な視点の欠如による経営判断の硬直化のため

閉店が相次いだ根本的な理由として、経営における「多角的な視点」が不足していたため、という専門的な見方もできます。
多角的な視点とは、物事を一つの見方だけでなく、お客様の立場、経済の動き、社会の変化など、様々な角度から立体的に捉える考え方のことです。
多くの店舗が「高級食パンはブームだから売れる」という単一的な成功体験に頼りすぎてしまい、ブームが去った後の市場の変化に柔軟に対応できなかったのではないでしょうか。
例えば、お客様のニーズが「特別な日の贅沢品」から「日常的に食べられる、コストパフォーマンスの良いもの」へと変化しているのに、同じアプローチを続けてしまった可能性があります。
売上が落ちた時、「気合が足りない」といった精神論や固定観念で物事を判断するのではなく、「なぜ売れないのか?」を冷静に分析し、新しい打ち手を考える必要があったのです。
一本堂はフランチャイズ展開が中心だったため、各店舗が独自の判断で経営方針を転換することが難しかった、という側面もあったかもしれません。
このような視点の硬直化が、コスト高騰や競合激化といった外部環境の変化への対応を遅らせ、結果的に閉店という選択肢しか残されなくさせた、と考えられます。
| 閉店したと考えられる店舗例 | 閉店日 | 考えられる背景 |
|---|---|---|
| 焼きたて食パン専門店 一本堂 君津店 | 2022年8月14日 | 2018年オープンと、ブームの波に乗って開店した店舗は、ブーム終焉の影響を直接受けやすかったと思われます。 |
| 高級食パン専門店 ここに決めた 元住吉店 | 2022年9月30日 | 話題性を狙った店名もブームの一つの特徴でしたが、ブームが去るとその効果も薄れてしまった可能性があります。 |
| どんだけ自己中 豊橋店 | 2022年9月30日 | 奇抜な店名で注目を集める戦略は、ブームの最中には有効でしたが、長期的な経営には別の視点が必要だったかもしれません。 |
| 告白はママから(吉祥寺) | 2022年1月31日 | わずか2年での閉店は、ブームという追い風がなくなった途端、経営が立ち行かなくなった典型例と言えるかもしれません。 |
一本堂が閉店ラッシュ?過去に閉店した店舗例
実際に、2022年から2024年にかけて、全国各地で一本堂の閉店が報告されています。
これはまさに「閉店ラッシュ」と言える状況です。
以下に、過去に閉店した店舗の一部をまとめました。
- 2024年11月30日:一本堂 北海道千歳勇舞店 閉店
- 2024年3月10日:一本堂 釧路愛国店 閉店
- 2023年12月30日:焼き立て食パン専門店 一本堂 札幌琴似店 閉店
- 2022年9月30日:食パン専門店 髙匠 月島店 閉店
- 2022年9月17日:焼き立て食パン専門店 一本堂 長嶺店 閉店
- 2022年9月11日:焼き立て食パン専門店 一本堂 八千代中央駅前店 閉店
- 2022年8月31日:焼きたて食パン専門店 一本堂 福島新白河店 閉店
- 2022年8月31日:焼きたて食パン専門店 一本堂 十条銀座店 閉店
- 2022年8月31日:焼きたて食パン専門店 一本堂 八王子横山店 閉店
- 2022年8月29日:焼きたて食パン専門店 一本堂 小牧店 閉店
- 2022年8月27日:焼きたて食パン専門店 一本堂 平和島駅前店 閉店
- 2022年8月14日:焼きたて食パン専門店 一本堂 世田谷烏山店 閉店
- 2022年8月14日:焼きたて食パン専門店 一本堂 君津店 閉店
関連情報としては小麦の奴隷も閉店ラッシュのようです。

食パンがまずい・美味しい?一本堂の印象を調査
閉店ラッシュと聞くと「味がまずいのでは?」と心配になる方もいるかもしれませんが、調査したところ、その心配はほとんどないようです。
SNSや口コミサイトでの評判を割合で示すと、以下のような印象でした。
圧倒的に「美味しい」という声が多く、閉店を惜しむ声も多数見られました。
具体的な口コミとしては、以下のようなものが代表的です。
向いている人
これまでの情報を総合すると、一本堂の食パンは、その特徴から特に次のような人におすすめできると考えられます。閉店してしまった店舗も多いですが、もしお近くにまだ営業している店舗があれば、ぜひ一度試してみてはいかがでしょうか。
- もちもち、ふわふわとした食感のパンが好きな人
- パン生地そのものの、優しい甘みを楽しみたい人
- 添加物を気にしていて、安心して食べられるパンを探している人
- 他の有名高級食パン専門店は「高すぎる」と感じている人
- 食事パンとしてだけでなく、おやつのようなデザート感覚で楽しめるパンが好きな人
Q&A
- なんであんなに閉店しているのに、まだ営業している店舗もあるの?
閉店の主な理由は物価高や競争の激化ですが、全店舗が一斉に経営不振になったわけではないからです。一本堂はフランチャイズ店が多いので、各店舗の経営状況は、そのお店の立地やオーナーさんの経営手腕によって大きく異なります。地域のお客様に愛されて固定客をしっかりと掴んでいる店舗や、人件費などのコスト管理が上手な店舗は、厳しい状況の中でも利益を確保し、営業を続けられていると考えられます。つまり、お店ごとの努力や工夫によって、今も元気に営業している店舗がたくさんあるのです。
- 一本堂って、他の高級食パン店(乃が美とか)と比べて何が違うの?
大きな違いは「価格」と「コンセプト」です。一本堂の主力食パン「一本堂」は一斤350円で、乃が美(550円)や銀座に志かわ(580円)と比べると、かなり手頃な価格設定になっています。これは嬉しいポイントですよね。また、「手作り、焼きたて、無添加」を強く打ち出しており、はちみつや卵を使っていないパンもあるため、アレルギーが心配な方や小さなお子さんがいるご家庭でも選びやすいのが特徴です。さらに、シンプルな食パンだけでなく、「ちぎりシュガーソフト」のようなデザート系のパンや季節限定パンなど、商品の種類が豊富なのも一本堂ならではの魅力だと思います。
- 閉店した店舗の跡地ってどうなってるの?
ケースバイケースですが、一本堂の店舗は駅前や商店街など、人通りの多い良い場所にあることが多いため、閉店後もすぐに別の店舗が入ることが多いようです。例えば、ベーカリープロデューサーが手掛けた「告白はママから」という吉祥寺のお店の跡地には、紅茶専門店の「TEA MARKET Gclef」が移転オープンしています。また、閉店する際に、お店の内装や設備をそのままの状態で次の借り主に売却する「居抜き売却」という方法もあります。これを利用すると、新しくお店を始める人が少ない費用で開業できるため、跡地にまた新しい飲食店がオープンする、というケースも少なくないと考えられます。








