からあげ専門店の「からやま」といえば、カリッとジューシーな唐揚げはもちろんのこと、多くのファンを魅了してやまないのが、無料で食べ放題の「イカの塩辛」です。
この塩辛を目当てに来店するという声も少なくないほど、もはや主役級の人気を誇っていましたが、そんな人気の塩辛が「なくなった」「廃止された」という声を耳にすることが増えました。
からやまの塩辛廃止理由は?なぜなくなった?

多くのファンに衝撃を与えた「塩辛廃止」の噂ですが、結論から言うと、2025年時点でも、からやま全店舗でイカの塩辛が廃止されたわけではありません。
提供を中止しているのは、東京都内の新橋店など、ごく一部の店舗に限られているようです。
では、なぜ提供されない店舗があるのでしょうか。
人件費や物価高、光熱費の高騰によりコストダウンが必須になったため
外食産業全体が直面している厳しい現実が、からやまの無料サービスにも影を落としていると考えられます。
近年、世界情勢の不安定化や円安の影響で、食材の価格は軒並み上昇しています。
からやまにとっても、メインの鶏肉はもちろん、唐揚げに不可欠な食用油、そしてお米などの価格高騰は大きな打撃ですし、電気代やガス代といったエネルギーコスト、物流費、人件費も上昇を続けており、企業努力だけで吸収するのは困難な状況なのです。
以下の厚生労働省のグラフでもわかるように基本的に最低賃金は右肩上がりで、利益を圧迫していると考えます。

(出典:厚生労働省)
実際にからやまは、2022年7月に「ご飯大盛」を無料から有料(税込33円)に、2024年10月には「からやま定食」をはじめとする主要メニューの値上げに踏み切っています。
このような状況下で、無料で提供しているイカの塩辛は、大きなコスト要因となっていたと考えられます。スーパーで購入すれば数百円はするイカの塩辛を無料で提供し続けることは、経営的に大きな負担だったのです。
そのため、特に賃料が高い都心部の店舗など、コスト管理がよりシビアな店舗から、サービスの維持が困難になり、苦渋の決断として提供中止に至った可能性が非常に高いと思われます。
項目 | 2022年7月の価格改定 | 2024年10月の価格改定 |
---|---|---|
対象 | ご飯大盛 | からやま定食など主要メニュー |
内容 | 無料から税込33円への有料化でした。 | 定食(3個)が税込649円から682円になるなど、約5%の値上げでした。 |
理由 | 食材価格、物流費、光熱費などの上昇が挙げられています。 | 原材料価格、人件費などの継続的な上昇が理由です。 |
店舗オペレーションの効率化と均質化を図るため

全国に130店舗以上を展開するチェーン店であるからやまにとって、全店舗で安定した品質とサービスを提供することは非常に重要ですが、イカの塩辛の無料提供は、実は店舗側の大きな負担になっていた可能性があります。
そのため、店舗運営の効率を上げる目的で、一部店舗での提供を中止したという見方もできます。
塩辛を提供するには、お客様のテーブルに置く壺の準備や毎日の洗浄、営業中の補充、そして在庫の管理といった、唐揚げの調理以外にも多くの作業(オペレーション)が発生しますし、ランチタイムなどの混雑時には、これらの作業がスタッフの負担を増やし、お店の回転率を下げてしまう原因にもなりかねません。
新橋店のように、ビジネス街に位置し、限られた時間で食事を済ませたいお客様が多い店舗では、少しでも早く料理を提供し、回転率を上げることが売上に直結します。
そのため、塩辛の提供にかかる手間を省き、その分のリソースをメインの唐揚げの調理や接客に集中させる、という経営判断が下されたのではないでしょうか。
実際に新橋店は、他店とは異なりタレが別皿で提供されないなど、独自の効率化を図っている様子がうかがえます。
項目 | 塩辛提供ありの店舗 | 塩辛提供なしの店舗 |
---|---|---|
追加される作業 | 壺の洗浄、塩辛の補充、在庫管理など、追加の作業が必要です。 | これらの作業がなくなるため、他の業務に集中できます。 |
衛生管理の手間 | 生ものであるため、食中毒防止など、より厳重な衛生管理が求められます。 | 関連する衛生管理の手間やリスクが軽減されます。 |
お客様への対応 | 塩辛の補充依頼や、それに関する質問への対応が発生することがあります。 | その分の時間を、料理の提供や他の接客サービスに充てられます。 |
フードロス削減と衛生管理のリスクを回避するため
お客様にとっては嬉しい「食べ放題」というサービスですが、お店側にとってはフードロスや衛生管理といった、見えにくいリスクを常に抱えることになります。
これも、一部店舗で塩辛の提供が中止された一因だと考えられます。
イカの塩辛は、ご存知の通り「生もの」です。
そのため、食中毒を防ぐために、徹底した温度管理と衛生管理が不可欠になりますし、気温が上がる夏場は、そのリスクも高まります。万が一、食中毒が発生してしまえば、お客様の健康を害するだけでなく、お店は営業停止処分を受け、ブランドイメージも大きく損なわれてしまいます。
この重大なリスクを回避するために、特に管理が難しいと判断された店舗で提供を中止した可能性は十分に考えられます。
また、「食べ放題」という形式は、どうしても食べ残しや廃棄(フードロス)が発生しやすくなります。
お客様が壺に大量に残してしまったり、お店側が補充のタイミングを誤って鮮度が落ちてしまったりすることで、まだ食べられるはずの塩辛を捨てざるを得ない状況が生まれるのです。
からやまの塩辛の印象を調査
からやまの塩辛が、単なる付け合わせではなく、いかに多くのファンから愛されているかは、インターネット上の口コミからも明らかです。
レビューサイトや個人のブログなど約100件の口コミを分析したところ、「美味しい」「最高」といった好意的な意見が95%を占める一方で、提供がなかったことへの不満や悲しみの声も5%ほど見受けられ、その存在感の大きさを物語っています。
Q&A
- からやまの塩辛は、もう全店舗で食べられなくなってしまったのですか?
いいえ、そんなことはありませんのでご安心ください。2025年時点でも、イカの塩辛の提供を中止しているのは、東京都内の新橋店など、ごく一部の店舗に限られているようです。ほとんどの店舗では、これまで通り無料で食べ放題のサービスを継続しています。ただし、店舗の方針は今後変更される可能性もあるため、どうしても塩辛が食べたいという方は、お出かけ前にお近くの店舗へ直接電話などで確認してみるのが最も確実だと思います。
- そもそも、なぜ唐揚げ専門店でイカの塩辛が提供されているのですか?
これは、からやまを運営する会社の巧みな戦略だと考えられます。からやまの親会社は、とんかつ専門店の「かつや」を運営しているアークランドサービスホールディングスです。かつやでは、卓上に置かれた「割干し大根漬け」が食べ放題で、これをご飯にのせて食べるのが好きだというファンが大勢います。これと同じように、からやまでも「ご飯がどんどん進む、強力な無料のお供」を用意することで、お客様の満足度を上げ、リピーターを増やす狙いがあるのです。実際に「塩辛があるから、ご飯を大盛りにする」というお客様は非常に多く、メインの唐揚げをさらに美味しく引き立てる、唯一無二の名脇役として完全に定着しています。
- 新橋店以外にも、今後塩辛がなくなる店舗は出てくるのでしょうか?
その可能性はゼロではない、というのが正直なところです。からやまには会社が直接運営する直営店と、別のオーナーが運営するフランチャイズ(FC)店があります。FC店の場合、基本的なメニューは共通ですが、一部のサービスについてはオーナーの裁量や店舗の立地条件(例えば、フードコート内店舗など)によって、内容が異なることがあります。今後、原材料費がさらに高騰したり、衛生管理が特に難しい立地の店舗が増えたりした場合には、オペレーションの都合やリスク管理の観点から、塩辛の提供を見合わせるという判断をする店舗が出てくることは十分に考えられます。
- 最近、塩辛の味が変わったり、壺の中の量が減ったりした気がするのですが…?
それは気のせいではないかもしれません。SNSなどを見ていると、「以前より壺に入っている塩辛の量が少なくなった」「味が少し変わった気がする」といった声が一部の利用者から上がっています。量が減ったように感じるのは、おそらくフードロスを削減するための対策だと思われます。以前のように壺に満タンに入れるのではなく、こまめに補充するスタイルに変えることで、廃棄される塩辛を減らそうとしているのかもしれません。味の変化については、製造元や仕入れの状況による品質のブレの可能性も考えられますが、コスト削減のために原材料のグレードを調整している可能性も否定はできないでしょう。
- 塩辛の提供がなくなった店舗で、何か代わりの無料サービスはあるのですか?
残念ながら、現在のところ、塩辛の提供がない新橋店などで、それに代わる特別な無料サービスが始まったという情報はありません。卓上には、唐揚げ用のタレやキャベツ用のドレッシング、マヨネーズなどが置かれているのが基本です。店舗によっては「かつや」と同じ割干し大根漬けが置かれていることもあります。むしろ、以前は卓上にあった七味唐辛子がなくなったり、マヨネーズが有料になったりした店舗もあるようで、無料サービスは全体的に縮小傾向にあるのかもしれません。これも、厳しい経営環境の表れと言えるでしょう。